第18話 鈍感。

「……流石ね。見事に全教科百点満点……。なのに、なんで万年二位なの?」

須藤委員長は採点を終えると、俺が気にしている事を、どストレートに聞いてくる。

「お前はそういう事を聞くときにもう少しオブラートに包めんのかね……。」

カウンターでレバーブローをもらった気分だ……。


「どっちにしろ聞く内容が一緒なら、ハッキリ聞いたほうが良くない?」

「まぁ、そうだけどよ。……いつもテストでは見直しをするんだ。見直しをし過ぎて、直さなくていいとこまで直しちまう。 癖みたいなもんで、それをやらないと不安で仕方ないんだ。」

「なる程……だから万年二位なんだ。」

自分でも分かってる……変な癖だって……見直さなきゃいいって……。


「でも、今は全教科満点だったよね。何で?」

「…………え?」

そういえばそうだ……。言われるまで気付かなかった……。

「もしかしてさ、『テスト本番』とか思わなきゃイケるんじゃない?」

そう言われてみれば、確かにそうなのかも知れない……。

今まで、クソ意地張ってきたけど、それがもし足枷になってるなら……それにもう今更、気張る必要も無いか。


「そうかもな、あんがとな。委員長。」

「いえいえ。」

教卓の椅子に座りながら委員長はニコリと微笑んでいた。


ーーーー。


「まさか、本当にパフェ奢ってくれるなんて思わなかったわ……。」

俺が補習テストをサッサと終え、時間もあったから約束通り委員長をカフェに連れてきたのだが……。

どうやら、冗談で言っていたらしい……。


「取り敢えず席に座っちまったから、さっさとパフェ選んでくれ!」

クソ、冗談ならもっと早くに言えよ!

「まぁまぁ、そう焦らないで!私も誰かと食事するなんて中々無いんだから……って、何その哀れみの目は!」

「いや、友達いねぇんだなって……。俺が初トモになってやんよ!」

「友達くらいいるわよ!!」

そんな他愛もない話をしながらも、委員長は店員さんにパフェを注文しているようだ。


カフェなんて、ほとんど入りゃしねぇから、何かこっ恥ずかしいな。


「お待たせ致しました!『ラブラブカップルスペシャルパフェ』です!」

店員さんの満面の笑みと共に運ばれて来たのは、デカイハートのチョコがてっぺんに付けられ、星やら『LOVE』文字のチョコをあしらった究極デカ盛り恥ずかしパフェだった!

「委員長……。お前……こんなん頼んでたのか……?」

「いやー、おふざけのつもりが……まさかこんなにガチなのが来るなんて……想像してなかったや……。」

どうすんだこんな1メートル近くあるパフェ。

さっきから他の客がチラチラ見てくるし……完全に公開処刑じゃねぇか!


「あ〜〜ん!」

不意に委員長がスプーンですくったパフェを嬉しそうな顔をしながら差し出してくる。

「お、おい!委員長……!?」

「あーーん!!」

「わ、分かったよ……んっ。美味いな!」

「本当!?……へへっ!」

委員長は少し恥ずかしそうに頬をポリッと掻く。いつも見る委員長とは印象が全然違って見えるのは気のせいだろうか……。

それにしても、委員長が作った訳でも無いのに何で喜んでんだ?


「……ほらよ。」

俺もパフェをすくい取り、委員長に差し出す。

本当ならこんな事はしたくないが、俺だけ恥ずかしい思いをさせられるのも癪だしな。 委員長にも恥ずかしい思いをしてもらうぜ!


「…………えっと……へへっ!」

だから何で嬉しそうなんだよ、コイツは!!

少しは恥ずかしがれよ!!

「んんっ!!美味しい!!ありがと、海斗!」

……あれ?今コレ、俺達がしてる事ってカップルの奴らがやるアレですか?

それに、海斗って……いつもは『海斗君』なのに……。


「海斗、何で私がわざわざ補習テストの教官引き受けたと思う?」

「何だよイキナリ。そりゃ、オメェが委員長だからだろ?」

「残念、違いまーす!」

「あ?分かんねぇよ、そんなん。」

俺はそんな事よりも一刻も早くこのカフェから立ち去りたいんだよ!


「海斗の事が、ずっと前から好きだったからだよ!」

叫び声にも近い声で委員長が発した言葉は一瞬、俺の思考回路を停止させた。

背中や顔、手にブワッと汗が垂れてくるのが分かる。

クーラーはガンガンに効いている。

この汗は暑さによるものなんかじゃない……。


ーー俺は、告白されたんだ。

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