第17話 補習テスト。

「あら、気が滅入ってるとこ悪いけど、貴方には一緒に来てもらうわよ。」

彼女は冷徹な眼差しと不敵な笑みを浮かべながら、そう言うと俺の腕をつかみ歩き出した。


ーーーーーー。


「ここは学校? おい、今は夏休みじゃねえのか!?」

「皆はね。でも残念ながら、あなたは違う。」

そう答えた彼女は須藤委員長。

「ま、まさか…………!?」

「そう、そのまさか。あなたにはまだ補習授業が残っているもの。ほら、行くわよ!」

彼女は両手で俺の背中を無理やりグイグイと押し、俺を校舎へと連れて行く。

「嫌だ行きたくない!せっかくの夏休みを学校で過ごすなんて嫌だー!」

「何を小学生みたいに駄々こねてんのよ! あなたは頭がいいんだからさっさと補修のテストぐらい受けちゃいなさい!」

「イヤだー!釣りをするんだ、キャンプをするんだ、温泉に入るんだー!」

「騒がしい!来い、小僧!」

須藤委員長に襟を捕まれて引きずられ、無理やり教室に連れてこられた俺は、半ば強制的にテストを受けさせられる羽目になった。


「なぁ、須藤。テストは受けるけど、その前にちょっと聞きたい事があるんだけどいいか?」

「え、何よ。改まって。」

「そのさ、俺が入院してる時、1回見舞いに来てくれたけど、その後みんなパッタリ来なくなったのは、何か理由があるのか?」

それっぽい事言ってるようだが、実際は拗ねた小学生みたいな質問だ。


「ぷっ、あはははははっ!何それ!」

普段笑ったりしない須藤委員長がお腹を抱えて笑う。

やっぱり笑うよな、そりゃ……。

「あれはね、鳳星院君の護衛の人達に止められてたからよ。貴方の親族か鳳星院さんしか入れないって。」

なる程……。鳳星院が犯人グループを突き止め、捕まった後に護衛がついたからニ回目以降は来れなくなった訳か。


「さっ、分かったら補習テストをやる!」

バシンッと机の上にテスト用紙が置かれる。

「…………えっ、先生は…………?」

俺の問いかけに、委員長は眼鏡を左中指でクイッと上げると、右手の親指を委員長自身に向ける。

「わ・た・し!」

……マジかよ……こういうのって、普通は教師だろ。

クソだりぃからさっさと終わらそう……。


「終わったらパフェ奢ってね〜!」

委員長は教卓の椅子に腰掛けるとヒラヒラと手を振る。

ーー最悪の夏休みの始まりかよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る