第10話 死にぞこないの不良。
気が付くと俺は病院のベッドで、酸素マスクをあてがわれて寝かされていた。
気力がないのかそれとも体中が折れているのか全く動くことができない。
徐々に思い出されていくあの闘い。
あの女の子無事だったのだろうか。工場で最後に聞いたあの声がかすかに頭の中に残っていた。
薄れ行く意識の中、救急車に乗せられていたことだけは覚えている。
…………俺は女の子を救うこともできずに負けたのか……。
憤りと悲しみ悔しさが入り混じって頭の中を駆け巡る。
顔をわずかに動かすことが出来た為、窓際に目をやるともうすっかりと陽は落ちていた。
窓際の椅子には俺の鞄と紙袋のようなものが置いてあった。
もちろん紙袋に見覚えはない。
食事台の上には、皮を剥かれて一口大に切られたりんごがラップをかけられ、皿の上に置かれていた。
「随分とまぁ派手にやられたもんだな。」
聞き馴染みのある声がどこからか聞こえてくる。
「しかしお前が喧嘩に負けるとこなんて初めて見たぜ。」
その声の主は椅子に置かれてあった俺の鞄と紙袋をどけてドカッと座った。
『真也……。』
俺は酸素マスクをしながらくぐもった声でそいつの名前を呼んだ。
「喋らなくていいぞ。お前は顔を起こすことができないから分からないかもしれないが、相当こっぴどくやられている。」
真也はラップを引き剥がし皿の上にあったりんごを一つだけ頬張るとこう言った。
「お前が助けに入ったあの女の子な、無事だったぞ。後は俺に任せろ。」
真也は椅子に鞄と紙袋を戻し、病室を出て行った。
ーー無事で良かった。
安堵とともに、再度湧き上がってくる憤怒。
…………奴等は絶対に許さない。
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