第2話
アフダルという男が住むこの島で夜を明かす事になった。
材料調達組と合流したことにより、拠点にはロート、カルコス、ヴィオレ、シーニー、アズラク、アフダルの6人が揃っていた。
彼らは島の拾った食材を調理、住処をより快適なものに作り上げていた。
少しすると作業をしていたアズラクのリングはまた少し震えた。
「…ヴェルデ達はひとまず日が昇るまで野宿するって」
まだ合流できていないネロ達は翌日に合流する事ができそうだ。
「…それは良かった。にしても、アフダルさんはこの島で暮らしていたのですね」
体調が回復したヴィオレも作業を微力ながら手伝っていた。
初代アルコバレーノのメンバー、アフダルはNo.2の活躍として世間にも当然のように知られていた。
「ここは儂の生き方に似合う。もう引退した爺にはちょうどいい」
「…アフダルさん、少し話したい事があります」
ヴィオレはアフダルに自分たちがこれから行おうとしている事を話した。
アズラクやシーニーも既にカルコスから聞いていたため、これで6人全て裏オール社について認知する事ができた。
「…やはりそんなくだらない事を考えていたのか、あの企業は」
「それでお前はその事を儂に話してどうしたいんだ」
元々オール社にいたアフダルもあの企業には悪どいイメージは抱いていた。
そして、今この島に住んでいる自分に何を求めているのか狙いを聞いた。
「私たちに協力してほし「ダメだ」
ヴィオレが言い終わる前にアフダルは一蹴した。
「儂はこの世界の人間は嫌いだ、そして自身が洗脳されようがもうこの年。どうなったって別にいいんだ」
過去に世界を背負った男の見る影はなかった。
もう人生の幕を閉じようとしていた。
「…、なんとなくそういう答えが返ってくるって思っていました」
「なら、この計画を助けるヒントを貰うことできないでしょうか」
ヒント? アフダルは自身に協力できることなど、他にないと思っていた。
「ルージュさんのリングコードについて教えてほしいです」
ルージュの活躍は多くのメディアで報じていた。
だが活動妨害防止の為、必ずコードと技名を伏せていた。
その為、一般人には彼の能力を知るには限りがあった。
その点、初代アルコバレーノNo.1のルージュの戦友であるアフダルは彼の戦いの近くにいたはずだ。
ならばアフダルなら彼のコードもいくつか知っているはずだ。
アフダルの近くにはロートも寄ってきていた。
「…アフダルさん、ボクはもっとみんなの力になりたいんです…。お願いします」
ロートは頭を下げた。
「ロート、お前は常に負にしがみついて生きているようだ」
「負にしがみついて時間を失うな」
「事実を受け入れ、前進しろ」
アフダルはコードを教える前にロートに伝えるべき事を先に伝えた。
ロートは言葉を受け、そのまま下を向いたままだった。
直後、アフダルはコードを連続して伝え始めた。
「『コード0521:ホットウィンド』
『コード0531:コールドウィンド』
『コード0540:サーモスタット』」
「えっ!あっ…」
ロートは急に言われたものだが、驚いてしまい聞き逃してしまっていた。
しかし、ヴィオレがしっかりリングのメモ機能に取っていた。
「ロート、コードのメモは全てあなたのリングに送っておくわ。練習しておいて」
そんなやり取りをしているうちにカルコス達は寝床と料理を作成し終えていた。
「今日はもう飯食って寝ておけ、次に備えろ」
アフダルはそう言い残し、去っていった。
彼は彼の住処があるのだろう。
ロート達は5人となり、海が近い拠点で一夜を過ごすことにした。
そして翌朝になり、ネロ達への視点へ代わる。
彼らの目を覚ました原因はどうやら先ほど出くわした大蛇の1匹であるようだ。
彼らが目覚めた時には既に大蛇の尾で囲われていた。
「…くそっ、起きた瞬間からこれかよ!!嫌なウォーニングアップだな!」
「…」
(グォー…グォー…)
ネロとヴェルデは異変に気付き、すぐに起きたが、ナランハのみまだ寝ていたようだ。
『コード0669:風重(ふうちょう)』
ヴェルデは狙いを定めていた大蛇に対し、長い尾に向け先に攻撃を仕掛けた。
大蛇の体は攻撃を受けた部位のみ地に押し付けられた。
大蛇は大きな鳴き声をあげ、興奮状態に変化した。
「じゃあ俺は!!」
ネロは大蛇へ飛び乗った。
ネロは武器である木刀を大蛇のエラ部位に目掛けて突き刺し、そのまま短剣を大蛇の目に突き刺した。
より大蛇は暴れ始め、もはや周辺にある木々は全て薙ぎ倒されていた。
「片目の視界は奪った。ヴェルデ、もっと強力な技だせるか?」
「…」
ヴェルデは小さな体でネロの腹部を抱いた。
「えっ!?な、なんだ…」
『コード0656:風嵐(ふうらん)』
すると、ヴェルデとネロの体は宙に浮き、その場を中心に竜巻が起こった。
この島に流れる原因を作ったのはこの技のだった。
「うわぁー!!なんだこれ!すげぇ!!」
「…」
ヴェルデやネロは無傷の状態で大蛇が竜巻で胴体が捻られている様子を眺めているだけだった。
そして大蛇の胴体は引き裂かれ、楽々倒せたようだ。
技の発動が終わり、ヴェルデとネロが地に着地した時には大蛇の胴体の一部と薙ぎ倒された木々は吹き飛ばされ、2人の周辺は平地になっていた。
「ヴェルデ!!お前すげぇ!こんな力持ってたのかよ!」
「…アルコバレーノにいる以上、こんなので苦戦していたら成り立たない」
「ありがとうな!…ってナランハのおっさんはどこいった!?」
ヴェルデの技に直撃していたのは大蛇だけではない、寝ていたナランハも巻き添えだった。
しかし、吹き飛ばされた場所からうるさい声が聞こえてきた。
「ナッハッハ!!ヴェルデ殿!!起こし方にしては雑すぎますぞ!!」
笑っていた。なんとタフな男である。
その笑っているナランハの背後には2匹目の大蛇がいた。
「おっさん!!後ろ!!避け…」
「…ん!?」
ナランハが後ろを向いた時には大蛇の口内に入る直前だった。
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