〜感謝と謝罪で絆は結ぶ〜 一話
第1話
ネロ、ヴェルデ、ナランハのチームは未だ拠点には着けず、そのまま適当な地点で野宿する事にした。
「なぁ、俺ら拠点にたどり着けるのかな…」
「心配ないのであります!!ヴェルデ殿はマップ機能にはアズラク殿の位置が分かりますので!!」
「…」
ヴェルデは無言で焚き火をいじっていた。
するとネロは2人に質問を投げかけた。
「お前ら2人って、例えば仲間とかに「足手まとい」なんて言われた事あるか?」
ネロはまだ昼間のヴィオレの言葉を引きずっていた。
「ナッハッハ!!自分はしょっちゅうでありますよ!!」
「上長だけでなく!!部下にも!!言われた事ありますぞ!!ナッハッハ!!」
「…」
「…私はよく暴走するから」
どうやら2人にもそういった経験があるようだ。
ネロは少し安心したが、続けてナランハが口にした。
「ナッハッハ!!ただ!それをずっと言われるとさすがにみんなに切り捨てられるのであります!!ナッハッハ!!」
「…そっかぁ、ハァ…」
結局またネロは落ち込んだ。
「…どうしたの」
ヴェルデはさすがに鬱陶しかったのか、ネロに聞いてみた。
「ヴィオレに俺がいると足手まといって言われてよ…。やっぱり俺はこれからみんなに迷惑かけないようにちゃんと自立していこうかなぁって…」
ネロはヴェルデに愚痴をこぼした。
すると無口なヴェルデが珍しく語り始めた。
「…自立していくなんて思ってもダメだよ」
「…自立していると思っても、それは必ず誰かに支えられている」
「…だから、そういう事に気付いて感謝のできる人間になりなよ」
意外にも的確でしっかりした回答がヴェルデから出ると思わず、男2人は驚いて彼女を見た。
ヴェルデは帽子を深く被って照れ隠しをした。
「ありがとう、ヴェルデ。確かにそうだな。俺、お前の事勘違いしてたよ」
「…どう勘違いしてたか分からないけど、私も勘違いで船を壊したんだし…」
「その…ごめん…」
「ナッハッハ!!やはり感謝と謝罪は心を豊かにさせますなぁ!!」
いい感じだったのだが、ナランハのデカい声で台無しになってしまった。
だが、ネロも徐々に笑顔を取り戻していった。
「ナランハのおっさんもありがとうな、助けてくれて。おっさんなんか、いかにも世の為人の為って感じだもんな!」
ネロはナランハにも感謝した。
加えて誉めたのだが、ナランハの回答は違った。
「ナッハッハ!!世の為、人の為ではないのであります!!」
「自分の為、エゴの為であります!!」
「…?人の為が自分の為?」
「人の為と思っても結局それは大きなお世話だったりするのであります!!ならばそれは全て自分の為だったりするのであります!!」
人の為、それは言わばそう思ってる人間のエゴ。
本当の人の為と言うのは結局その人物にしか分からないのである。
(って言う事はヴィオレがやろうとしている事はエゴだって言いたいのか)
「いや、それは違うな。おっさん」
「その人の事を考えた上で、その人の為に動いてるのは決してエゴじゃない」
「俺らがその人の為に頑張っている姿を見せれば、きっとそれはエゴなんかじゃないって思わせられるぜ!」
「ナッハッハ!!ならばそれで良いのであります!!」
なんとも煮え切らない回答だったが、揉める必要もないのでそこで話は終わった。
焚き火を消し、3人はひとまず地べたで寝る事にした。
(ヴィオレのところに戻ったら、謝ろう)
(…そして、ありがとうって言おう)
そんな事を思いながらネロは眠る事にした。
翌朝になり、陽の光で起きると思った。
しかし彼らの予想と違い、不穏な音で目覚める事になる。
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