第4話
一方、食料など生き残る為の材料探しチーム。
「ヌゥ…これは食えんな!」
「カルくん!なんでも口に入れると危ないよ!」
「ガッハッハ!!ワシは昔からなんでも口に入れて確かめてるんだ!!」
食材探しではカルコスが特に役立った。
元々危険物察知能力が高いだけでなく、ヴィオレに飲まされた抗毒素薬のおかげで万一の時でも対応できた。
「ありがとう。君たちがいる事でこんな状況でも明るく思えるよ」
アズラクはさりげなく2人に感謝した。
「…?何を言っている、ワシらがこうやって行動できるのもお前さんのおかげだろ?」
「うん!お兄ちゃんのおかげでヴィー姉達を助けられるんだよ!」
逆に2人からも感謝された。
どうやらこのチームはとても平和なようである。
「…そういえば、君たちはなんでネグロ火山なんて危険地帯に向かおうとしてるんだい?」
「え?面白いからじゃないのー?」
この事情を知っているのはカルコスのみ、話して良いか迷ったものの野生の勘で信頼できると信じて話してみた。
「…そういうわけでワシらはなんか変な名前の奴を倒す為にネグロ火山に向かっておる!」
「そうなんだ!お兄ちゃんなんか会社にいて分かることあったー?」
「うーん…。全人類洗脳計画か…。オール社がまさかそんな事をなんて、にわかに信じがたい事だけど…」
カルコスは完全に信じてもらえるとは思っていなかったが、どうか敵同士にはならないでくれと祈っていた。
「でも、確かに僕たちの知らないオール社の人は沢山いる。それに黒い噂もたまに耳にすることはある」
「裏オール社という存在が僕たちの認識できる位置にいるのであれば、君たちに味方したいと思う!」
そう力強くアズラクが口にした途端、カルコスはアズラクに抱きついた。
「ウォォオオ!!アズラクと言ったな!!アズラク!!お前はホントにいい奴だな!!」
(く、苦しい…)
「いいね!男たちの友情!眩しいよ!」
シーニーがグットしそうになった瞬間、アズラクのリングが震えた。
「あ!ちょっと待ってカルコスさん!ヴェルデからメールが来てるみたい!」
「ヌォッ!?そうなのか!?」
「…どうやら無事ネロくんを見つけたようだね。良かった」
ヴェルデのメールはちゃんとアズラクに届いてたようだ。
「ヴェルデというのはあの無口な子どもの事だよな??」
「アズラクはあんな娘とでもちゃんと連携は取れるのか?」
カルコスはネロの無事を聞き安堵したが、ヴェルデという少女の事について聞きたくなっていた。
「カルくん!お兄ちゃんはヴェルデさんとは小さい頃からの幼馴染なんだよ!」
「そうだね、僕とヴェルデ…後ナランハさんは元々カエルレウムの地下出身で功績を成して、今こうしてるんだ」
「ヌゥ!?しかし地下住まいの人間はいつも酷い目に遭わされていると聞くぞ?」
元々地下住まいの彼らは確かに最初から恵まれた生活など送れなかった。
「僕は小さい頃からただ平凡な生活を望んでたんだ。だけど、ある日僕とヴェルデが地上に出た時、地上の大人にからかわれたんだ」
アズラクは遠い目をしていた。
おそらく想像もつかないほど辛い日々を送っていたんだろう。
「だけど、地上の大人に刃向かったんだよ。ヴェルデは、恐れるものは何もないかのように」
「そしてその時、ルージュさんが僕らを救ってくれたんだ。「未来のある者に汚れをつけるな」って」
「それを見てた僕とヴェルデ…、特にヴェルデかな。ルージュさんに憧れを抱いて、いつかこの世界を変えてやるって地上に上がれるように勉学や身体を徹底的に鍛え始めたんだ」
「ヌヌ…、なるほど…。お前さん達にとってルージュはヒーローそのものだったんだな…」
「あの時ヴェルデさんが怒ってたのも分かるね」
そうしてアズラクはヴェルデの話を続けた。
「その時からヴェルデは本当に凄いんだ」
「僕が「なんでそんなにいつも頑張るの?」って聞くとハテナを浮かべるんだ」
「彼女には頑張るや努力って概念がないんだ、良い意味で精神が麻痺してるんだ」
彼女は周りからはただの無愛想な少女に見えるかもしれない。
しかし1番身近にいたアズラクは最も彼女を評価していた。
「僕は必死で彼女についてきて、やっとの思いでここまできたんだ。僕らがこの世界を変える為に…!」
「ヌフフ…!アズラク、お前さん。ヴェルデの話をしている時はとても楽しそうだぞ!」
「うん!なんか好きな人の話してるみたい!」
カルコスとシーニーは2人して少しアズラクをからかってみた。
アズラクもそれを言われ、照れ顔になっていた。
「…う、うん。僕は…その…」
「あー!ダメだよお兄ちゃん!そういうのは本当に好きな人の前までとっておかないと!」
「ガッハッハ!!若いってのはいいのぅ!!」
そんなとても平和な時間を過ごしていた彼らに急な轟音が襲ってきた。
(ギャァ!!なんじゃ!この煩い鳴き声は!?)
(うるさーい!!)
(これは…おそらくナランハさんの能力だよ。みんな少し我慢して…!!)
どうやらナランハが大蛇に向かって放った声はここまで余裕で聞こえていたようだ。
そしてしばらくしてナランハの声は止んでいった。
「もしかしてヴェルデ達に何かあったのかな…?」
アズラクはすかさずヴェルデにメールを送った。
「ねぇ!お兄ちゃん!そろそろ暗くなりそうだし、収穫したものをヴィー姉のとこまで持っていこうよ!」
「…うん。そうだね、きっと彼らなら強いし大丈夫なはずだ」
「そうだな!!ワシらが今行うことはひとまずこの島での拠点で寝床を作り、ヴィオレの体調回復を願うことだ!!」
この平和なチームは収穫したものを持って、ヴィオレ達の元へ向かう事にした。
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