第2話
一同が流れ着いた島。
そこは木々が生い茂り、人が手を加えた形跡がない。
いかにも無人島のような島であった。
「おい、大丈夫か」
「グヌゥ…すまぬ、ありがとう」
ネロはこの悲惨な有り様で仲間たちの手を取っていた。
「ヴィオレ、ほら」
ネロがヴィオレに対し、立ち上がらせようと手を取ろうとした瞬間、ヴィオレはネロの手を振り払った。
「いい加減になさい!あなたの突発的な発言に私達はいつまで振り回されればいいの!」
ヴィオレは本気で怒っていた。
それもそうだ。
ブラウの場所で2回、そして船上で1回も極秘な情報を口走ってしまったからである。
「す、すまねぇ…」
「一度でもあなたがリーダーに向いてるなんて思った私が馬鹿だった。あなたはただこのチームに足を引っ張ってるだけよ!」
ネロはさすがにショックを受けてしまった。
反省する間もなく、トボトボと島の方へ行ってしまった。
「ヴィ、ヴィオレさんさすがに言い過ぎじゃ…」
「私達は命を賭けてこの計画を実行しているの、何も考えず行動しているようじゃ全滅する可能性だってあるわ」
どうやらヴェルデ達もアズラクによって上手く島に辿り着いたようだ。
するとアズラクはゆっくりとロートの方まで歩いていった。
「ねぇ、君。君は本当にルージュさんに酷いことはしなかった?」
子どもに語りかけるように優しい口調で聞いた。
ヴィオレは証拠のメールを提示するようロートに伝え、ロートは言う通りにした。
「うん。確かにこれはルージュさんのメールだ。疑ってごめんね」
「白いリングを付けた女性か…」
彼らの認識ではまだ白いリングなど存在しない。
謎に思いつつもアズラクはヴェルデ達の元へ戻り、彼女らに事情を説明していた。
「みんな、ごめんなさい!!シィこれからSNS禁止します!」
シーニーも気付き、一行に謝った。
元はと言えば、自身の不注意でヴェルデ達を呼んでしまった。
状況は把握しつつも、まずはみなに謝罪をして反省していた。
「ガッハッハ!気にするな!…しかし、この後はどうするかな…」
ローゼオ港から2000km、ネグロ火山まで5000km。
全くあてのない島に辿り着いてしまったのだ。
「私達の現状はかなり不利よ。助けを呼ぶにも近くにアルコバレーノがいる。この状況で私達側の援助は難しい」
「え!じゃあどうすれば…」
「ひとまずここではアルコバレーノの2人に取り入るしかないわね…」
先ほどまで激昂していたヴィオレも冷静になっていたが、むしろ徐々に弱々しくなっていた。
「ごめんちょっと私疲れちゃった…」
「え!?ヴィオレさん大丈夫!?」
シーニーはすかさずヴィオレの額に手を当てた。
「ヴィー姉、すごい熱。ねえみんな薬持ってない??」
しかし、常備食料、常備薬は全て船の保管庫に入れており、ネロ達の荷物の入ったバックもろともそのまま海に流れてしまっていた。
「…この状況、結構まずいかも。シィ、お兄ちゃん達の方に聞いてみるよ」
「ボ、ボクは能力でヴィオレを癒してみせるよ!」
シーニーはアズラク達の元へ、そしてロートは能力でヴィオレの熱を冷ましていた。
「ワ、ワシは…ってネロがいないぞ!?探しにいかなければ!!」
カルコスは辺りを見渡すと先ほどまでいたネロがいない事に気が付いた。
「心配いらないのであります!!失踪者を探すのは自分の役割であります!!」
すると、いつ間にか近くにナランハがいた。
そしてシーニーも彼らを連れて戻ってきたようだ。
「お兄ちゃん達も勘違いでこの状況を作っちゃったから、この島ではシィ達に協力してくれるって!」
どうやらヴェルデ側の人間もこの無人島に流れ着いた状況は争うのではなく協力し合う形をとっていたようだ。
「僕たちの使命は人を助ける事だよ。たとえお尋ね者だろうと、人である事には変わりない。全力でヴィオレさんを助けたいと思う」
アズラクは既に外部にSOSを出していた。
そして彼が持っていた薬をヴィオレに飲ませた。
「ナランハさんとヴェルデはネロくんの捜索をお願い。シーニーちゃんとカルコスさんは僕と一緒にこの島の食料になりそう物を探そう」
通信連絡機能を持つナランハとヴェルデには捜索をお願いした。
そして現状この島での食料を備蓄していく為に、野草や果物に詳しそうなカルコス。
人員増加能力を持つシーニーでチームを分けた。
「ヴィオレさんのこの場所を拠点にしよう、そしてヴィオレさん見守ってくれるかな。ロートくん」
「う、うん!!」
ヴィオレは草で出来たベットで寝かされた。
そしてヴィオレを見守る役として、通信機能を持ちサポートに回れるロートを配置した。
アズラクの的確な司令のもと。
それぞれ3組に分かれ、助けが来るまでこの島の探索が始まった。
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