第3話
ローゼオ港、防波堤付近にて。
ここもまたひと気の少ない場所である。
そんな場所で大金を賭けたギャンブルが今始まろうとしていた。
「えーっと、お姉さん達って今いくら持ってんの?」
「私達は2.5億今持ってるわ」
「じゃあこれでいこう。お姉さん達5人いるから1人ずつ各ゲームして、お姉さん達全員が負けたら2.5億貰う」
「でもお姉さん達1人でもオレに勝てたら1億を渡してやるよ」
引っかかる発言だ。
5人? 一行が後ろを向くとそこにはいつの間にかシーニーがいた。
「わぁ!面白そう!!シィもやってみたい!!」
目を輝かせて、これからやるゲームについて加わろうとしていた。
「…あ!もしかしてこの人がシーニーさん?」
ロートがそう聞くと、ネロは頷いた。
「だ、だったら!こんな危なそうな事止めて、早く漁船の人たちのところ行こうよ!!」
ロートはどうも自信がなく早くこの場から逃げようとしていたが。
「ガッハッハ!!面白そうだ!ワシは村1番の遊び達人だからな!!ワシが1番にこの男を負かしてやるわい!!」
「なんだカルコス!!俺が1番にこいつを倒すんだぞ!!こんな偉そうな奴、俺の天才的な頭で一捻りにしてやる!!」
「わーい!!みんな!!シィも絶対勝つよ!!」
「面白そうね、リスク背負ってこそ勝負は燃えるものね」
ロートは青ざめた顔をした。
どうやらロート以外、全員勝負師であるようだ。
「だ、そうだ坊主。お前は逃げるか?」
「う…、やるよ!やってみせるよ!」
ロートもシンザの挑発に乗り、結局シンザの条件の元ゲームは始まった。
順番としては、カルコス、ネロ、ヴィオレ、シーニー、ロートの順となった。
(ボクの番来ないように…来ないように…)
するとシンザは折り畳み式の卓上を出し、横にはいくつものゲームになりそうな道具が入った箱を置いた。
「よし、じゃあ一番手のカルコスとか言うおっさん!そこに座ってくれや」
「任せろ!!お前たちの番が来る前にワシがこやつを倒してやるわい!!」
楽しそうにそして自信あり気にカルコスはシンザの対面椅子に座った。
「カルコスー!!負けんなよ!!お前の力を見せてやれ!!」
「シィも応援するよー!頑張れー!」
カルコスの背後には元気組が声援を送っていた。
「応援があるってのは羨ましいねぇ。さて、じゃあゲームなんだが、最初はおっさんが提案したゲームに乗ってやるよ」
余裕そうなシンザの発言に乗り、カルコスもワクワクしながら箱の中のゲーム用道具を漁った。
しばらくするとカルコスは思い付いたように、「おはじき」を15個出した。
「ガッハッハ!この街にもこんなのがあるなんてな!!じゃあやるか!石取りゲーム!!」
石取りゲーム言い換えると数取りゲーム。
ルールはとてもシンプル。
15個あるおはじきを1人最大3つまで取り合い、最後の1個を取ったら負けというゲーム。
1つだけ取る、2つだけ取る等して上手く調整する事で勝利を手にするのだ。
「いいね、とてもシンプルで。じゃあおっさんから取っていっていいぞ」
「いいのか!?じゃあワシは豪快にいくぞ!!」
そう言ってカルコスは3つおはじきを取った。
残り12個
「いいね、おっさん楽しそうだ」
次にシンザも3つ取った。
残り9個
「ワシは負けんぞ!?」
カルコスはまた2つ取った。
残り7個
シンザも無言で2つ取る。
残り5個
「ヌ!?ちょっと待て!!これワシ…」
「どうしたおっさん?早く取りなよ」
カルコスが1つ取った。
残り4個
すかさずシンザが3つ取った。
残り1個
「はい、おっさんの負け〜。案外あっさりだね〜」
カルコスは雷に打たれたようにショックを受けていた。
「ヌヌ…こんなはずじゃ…」
「馬鹿ねカルコス。このゲーム、必勝法があるのよ」
ヴィオレがこのゲームの必勝法を説明した。
このゲームには最大取る個数の上限が鍵になる。
今回のゲームでは最大3つまでというルール。
そのためその3に1を足した4の倍数+1の個数を残せば勝てるのだ。
つまり、15個ルールでは13(4×3+1)か9(4×2+1)か5(4×1+1)を一回でも残せばそこから勝利は確定する。
「なんだよ!カルコス!期待外れだぜ!次は俺がやってやる!」
カルコスはトボトボと椅子から離れ、次はネロが座った。
「ネロくーん!良いところ見せて!」
「おう!カルコスの仇打ってやるからな!」
「ネロ!頼むぞ!!ワシの仇をとってくれ!!」
カルコスは機嫌を取り直し、ネロの背後で声援を送る事にした。
「んじゃあまぁ、次はオレがゲームを提案するぜ。いいよな?」
「いいぜ!なんでもこい!」
するとシンザは5枚ずつ赤と青の色の分かれたカードを出した。
赤のカードをネロに5枚、青のカードをシンザに5枚。
そのカードには裏面は無地、表面にはそれぞれ1〜5の数字が書かれていた。
「題して、数字当てゲームだ」
「これもルールはシンプルだ」
シンザがこのゲームの説明した。
まず1人は卓上とは逆を向き目を隠す。
その間にもう1人はカードを裏面で適当な順番で台に並べる。
そして相手がカードに書かれた数字を不明な状態引き当てる。
お互い交互に2回引き、その引いたカードの合計数が高ければ勝ちというルール。
いわゆる心理戦だ。
「ちょっと待って」
ゲームを始めようとすると、ヴィオレが止めた。
「あなたが出したカード。あなたにとっては古傷などを印にして、カードの数字が分かるんじゃないかしら」
「用心深いね〜、オレはそんなのいちいち把握してないよ」
しかし念のため。
シーニーがペンギンを召喚し、それぞれのカードに新たな傷を入れて、印などが残らないようにした。
「いやぁ〜、オレがイカサマされるなんて思われるなんて!心外だなぁ!」
(いかにもしそうな悪い顔してるよ…)
ロートが内心思ってるところ、ゲームはスタートした。
シンザが後ろを向き目を隠すと、ネロがカードを確認したのち、ゆっくりと台の上に並べた。
最初に引くのはシンザからだ。
「今回は心理戦だからね〜。オレも用心深く質問しないとね」
「これは4…かな?」
「…」
意外にも冷静。
ネロは悟られないよう無言作戦に出た。
「質問に答えないタイプね〜。そういう奴いるいる」
「ガッハッハ!!ネロもやる時はやる男なんだぞ!!」
「そっかー、じゃあ」
そう言って、シンザは先ほど4と指名したカードを裏返した。
シンザは表に出すと、その通り。
4の書かれたカードであった。
「くっそぉぉ!なんで分かった!!」
ネロは悔しそうに無言を解除した。
ほら次はお兄さんの番だよとシンザは煽った。
しかし、次のネロの番では勢いよく裏返したカードは2のカードだった。
「ハッハッハ!やばいねお兄さん!次オレが5のカード引いちゃったら強制終了だよ!!」
「でもそれじゃあ面白くないし…、次はお兄さんから引いてよ」
シンザはどんどん煽ってくる。
それにムカついたネロは顔を叩き、冷静になった。
そしてゆっくりシンザのカードを選び始めた。
「ネロ、あなたがここで5のカードを引かないと、ここから勝てる可能性は低いわ」
「わーってるって!!」
ヴィオレのプレッシャーも跳ね除け、ネロは集中した。
「おい、このカード。5のカードだろ?」
なんとネロもシンザの真似をし、質問をした。
「そうだよ」
シンザは笑みを浮かべながら答えた。
(こんなの絶対嘘だよ…)
ロートがそう思うのも束の間、ネロは正直にそのカードを裏返した。
「あー!ネロくんそんな正直に!!」
「あの馬鹿っ」
観戦してた者は皆ネロが負けるであろうと思っていた。
しかし、ネロが表に向けたのは5のカードだった。
「やったぁぁ!!!俺の勝ちだー!!」
まるでもう勝ったかのような喜びを出していた。
周りも凄いとネロを褒めていた。
「いやまだ勝ってないけどね」
シンザは笑いながら答えた。
「でもこれでゲームは面白くなった!オレが5を引いたらお兄さん達の負け。3を引けば引き分け。2と1を引いたら負けってことになるな!」
そう。
ネロは2と5を引き、合計7。
シンザは現状4のカードとなる為、5を引かなければ勝てない。
「…あの、引き分けになったらどうなるの?」
「そうだなぁ。じゃあそれもお兄さん達の勝ちって事でいいよ」
なんと大盤振る舞い。
つまり引き分けもネロ達の勝ちとなると、シンザの勝てる確率は25%のみとなる。
「随分余裕そうね」
「まぁね!なかなか熱が入ってきて楽しくなってきたからさ!じゃ早速やろうか!」
そう言うと、同様の流れを行なった。
そしてシンザは4枚のカードを右から一つ一つ質問するようになった。
「これが5かな?」
「さぁ?どうだろうな」
「ネロくん!頑張れー!」
「おうよ!」
「じゃあ次、これが5かな?」
「そうだぜ!!」
(なるほどね…)
「じゃあこれが5?」
「ネロ…。大丈夫だよね…?」
「おうロート!任せろ!そうだな、これは5じゃねぇ!」
「ふーん、じゃあこれが5だね」
そう言うと何も質問をしていない1番左のカードを表に向けた。
それは5のカードだった。
ネロはビクンと跳ね、負けた〜とガックリした。
「あ〜惜しかったのにぃ〜!」
「グヌヌ…、ネロも負けてしまったのか」
(…)
1人ヴィオレは考えた。
そして、こっそりロートに耳打ちした。
「さぁて!これで2勝!じゃあ次は利口そうなお姉さんだね!」
「そうね、じゃあ次は私。さっきの2人のようにはいかないわよ」
「ハッハッハ!強気な女は嫌いじゃねぇ!ここからもっと盛り上げていこうぜぇ!」
シーニーは不思議そうな顔をして言った。
「お姉さん勝てるかなぁ」
するとロートはこっそりシーニーに伝えた。
(ヴィオレさんは『ある事』に気付いたんだ!勝てるよ!)
「じゃあ始めようか!!大金を賭けたゲーム!!3回戦を!!」
あっという間にヴィオレの番がやってきた。
ここで負けてしまえば、いよいよ終わりが見えてしまう。
しかし、
彼女はこの勝負のカラクリに気付き始めていた。
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