第2話

ルージュはブランコ村の村長の家で話をついていた。

その間、ネロとロートは村長の家の前で待っていた。


「いやぁ〜、ロート!凄かったな!あのおっさんの話!」


「…うん。でもホントかなぁ。ボクはまだルージュさんの話、信じられないよ…」


ネロが聞いた話は彼が住んでいる街の文明である。

そこは大都市で高さが山を越えるほど建造物がいくつも建っていたり、遠くの人同士で連絡をできる機械もあるとの事だ。


「まるで本に描いてあった通りの魔法そのもの!憧れるなぁ〜!」


ブランコ村にも書物はああるが、全て村にはない架空の話。

それがまさにルージュが過ごしている場所にはあるのだ。


「他にもさ、自分の足の速くできたり目から文字を出せたりするんだろぉ〜!ヤベェだろ!!」


「そ、そんな話もしてたかなぁ…」


2人が会話しているうちにルージュは村長と話をつけたのか家から出た。


「お!少年たち!待っててくれたのか!ありがたいねぇ〜」


どうやら村長からは村に一時的に泊まれる許可を得られ、ネロの家で過ごす話になった。

ブランコ村は人口が少ないが、その分一人一人の結束力は高かった。

しかし、余所者だからといって突き放すこともなく快く受け入れる村である。


「この村はおじさんの住む都市の人たちと違って、なにか心が暖かく感じるよ」


「この人と人が手を取り合う精神、おじさんも参考にしないとな!」


ルージュは笑いながら言った。


「村長のことだから俺の両親のことも分かって、俺ん家にしたんだろ〜!ま、イイぜ!おっさんついてこいよ!ロートも一緒にな!」


3人はネロの実家に向かう道中、村人達とも挨拶をしていた。

30人しかいない村、この村にとっては皆家族なようなものだった。


少し歩いたらすぐにネロの家の前まで着いた。

しかし、家からなにやら騒がしい声が聞こえた。

異変に気付き、一目散にネロは家の扉を開けた。


「父ちゃん、母ちゃん!何があった!!」


「ネロ!アーテルが熱出しちまって大変だよ!」


ネロの母親は慌ててそう言った。

アーテルとは2歳のネロの妹である。

子どもが少ないこの村では宝のような存在だが、発展していない村で熱は大病である。


「本当か!?今から薬になりそうな草探してくる!!」


ネロが今すぐにでも飛び出しそうなところをルージュは静止した。


「ちょっと待て少年」


何故か落ち着いている様子のルージュが服の袖をあげ、腕に赤色のリングを嵌めているのを見せてきた。


「ルージュさん…?一体何しようとしているの…?」


「今から少年たちに魔法を見せてやるよ!」


ルージュは熱を出しているアーテルの額に手を当て、小さな声でつぶやいた。


『コード0547:サーモス』


ルージュがそう言い放った後、手から冷気が湧き、アーテルの額を冷やしていった。


「よーし、これでちょっと落ち着いたはずだ!後はおじさんが持ってきたこの薬とサプリをこの子に飲ませといて!」


周りが呆然としている中、ルージュは軽くそう言った。

しかし悪い事をしていないのはすぐ分かった。今まで辛そうなアーテルの顔は明らかに心地の良い元気な顔に変わっていたからだ。


藁にもすがる思いだったネロの両親はアーテルに薬を飲ませ、何事もないことを確認したのちルージュに泣きながら感謝をした。


「ル、ルージュさんとおっしゃいましたか…。本当に私達の大事な子供を救って下さってありがとうございます…」


「いやいや!俺はそんな大したことしてないですよ!それより、俺こそ本日はお宅にお邪魔させていただき感謝します!」


ルージュはくだけた感謝をしたが、ネロの両親はとても彼の優しさに魅力を感じた。

是非ともゆっくりお休みくださいと伝え、寝床であるネロの部屋へ案内した。


事態が収まり、ネロの部屋に3人が落ち着いた。

そして、ネロが改めて嬉しそうに口を開いた。


「おっさん!ホントありがとうな!さっきの魔法みたいなの凄かったしめちゃくちゃカッコ良かったよ!!」


「いやぁ、おじさんやるときはやるからねぇ!」


ルージュは得意げになったところでロートが問うた。


「さっきの魔法っておじさんの住んでる人はみんな出来るの?」


「あぁ、あれはみんなできる事じゃないんだ。おじさん、腕につけてるリングを見せただろ?このリングを持っている人にしか出来ないんだ」


ルージュはそう言って赤色のリングを2人の前に出した。


「おじさんの都市ではみんな、銀色のリングを付けてるんだよね、こいつのおかげで人は遠くでも話せたりするんだ」


「他の機能もいっぱいあるんだけどね、赤色や銀色以外の色のリングはおじさんみたいに面白い魔法が使えたりするんだよ」


ネロやロートが想像してた以上に世界は広かった。

知らない魔法や文明、彼が話す内容は全て魅力がある話ばかり。

次第に彼らは外の世界へ興味を持ち始めた。


「ホント、すげぇなおっさんの住むところは!俺も行ってみてぇ〜!…あ!」


今日一連の物事が終わって、外はすっかり真っ暗になっていた。そんな中ネロは何かに気付いた。



「収穫の事、忘れてた!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る