第4話爆誕 週末異世界探検部
「ちょっ!? おまっ!! それどういう事だ!! いくら何でも、そりゃハードル高過ぎるぞ!!」
「そんな事言ったって地郎様ぁ~、どうしようもなかったんですよぉ~」
異世界転移物では、転移してきた勇者を最初に接待するのは王族の姫君というのが大方の相場だ。その流れで行けば、コイツは相当ポンコツだけど、それに準ずる存在と考えるのが正解だろう。認めたくは無いが……
国土がそこまで侵されたというのであれば、万に一つも勝ち目は無い。貴種離流譚なんか御免だぞ! 姫を守りながら国を復興させ、なおかつあの四人を探しだして保護をする……。そんな事してたら、いつ日本に帰れるのか見当もつかん! 全く、アホ華音が、好奇心の赴くままに、余計な事をしやがって!!
とにもかくにも、敵を知らねば対策など練る事なぞ出来る筈も無い。この期に及んで感は免れないが、俺は事の経緯を聞く事にした。
「で、何だってまた、こんな状況に陥っているんだ? この国の軍隊は一体何をやっていた!?」
「元々このアシハラ中ツ国は、アシハラ世界の最強軍事力を保持していた国で、四方の国々の侵略なんか、ちょいちょいのちょいで撃退していたんですが~」
「が?」
「ついさっき、状況が一変しちゃったんです~」
「ついさっき?」
何だ、その漫画みたいな状況は? て言うか、俺はその漫画みたいな状況を作り出せる人間に、物凄い心当たりが有るぞ……
眉をひそめる俺に、祖礼は涙目ウルウルで状況説明を始めた。
「元々は今回の侵略も、小競り合いのレベルだったんですよぉ~、でも、四方の国の軍勢に、異世界から転移してきた英傑が現れ、その軍どころか本国の政権まであっという間に掌握して、怒涛の勢いでここまで攻め上って来たんですぅ~。もうアシハラ中ツ国には、地郎様しか希望は無いんですぅ~。何とかして下さ~い」
「何とかって言ったってなぁ……、因みにその四人の英傑って、どんな奴なんだ?」
俺はその心当たりが正しいかどうかを確かめるべく、その四人についての情報を祖礼に求めた。
「まずは、アシハラ東ツ国に現れたのは、伝説の女王陛下と呼ばれる押しの強い美少女で、問答無用のカリスマ性で先頭に立ち、そのせいでアシハラ東ツ国の軍勢の士気はうなぎ登り。鎧袖一触で我が軍を蹴散らしてしまいました」
うん、華音だ、間違い無い。
「次にアシハラ西ツ国に現れたのは、降臨せし軍師と呼ばれる頭の切れる美少女で、奇想天外な軍略で我が軍を翻弄し、一網打尽に瓦解させてしまいました」
これは紺だな。
「そしてアシハラ南ツ国には、からくりの巫女という、どちらかというと妹系の美少女が現れ、見たこともないからくりを作り出し、猛攻を仕掛けて来ました。対処の方法を知らない我が軍はたちまちのうちに崩壊してしまいました」
璃瑠ぅううううううううう。
「最後に、アシハラ北ツ国には、口伝の女将軍という姉系の美女が現れ、艶やかな姿からは想像も出来ない戦闘力で、我が軍の精鋭猛者をバッタバッタとなぎ倒し、無人の野を進むが如く、もうすぐここへ……」
依桐さん、あんたねぇ……
ビンゴだな、こんな状況を作ったのは、あの四人しか居ない……
「で、確認の為に聞きたいんだが、その四人の英傑が転移してきたのは?」
「はい、地郎様が、天の鳥船で降臨される少し前ですぅ~」
はい確定! 全く……、何をやってるんだ、あの馬鹿娘達は……。
と、俺がそう思っている時に、アシハラ中ツ国に侵攻している四つの陣営の本陣では、後の四つ巴の戦いに備え、最後の軍議が行われていた……
「で、この戦いを制したら、私の望みを叶えてくれるのね?」
「御意、全ては伝説の女王陛下の為に」
「フフッ、面白い、良いわ、やってあげる」
最前線で指揮を執る、アシハラ東ツ国の『伝説の女王陛下』の瞳が、不敵に妖しく輝いた。
「さてと、ここまではサクッと進んだわね」
「流石は降臨せし軍師の手並み、お見事でございます」
「じゃあ、仕上げに行こうか、IQ300は伊達じゃないわよ」
軍務全件を委譲された、アシハラ西ツ国の『降臨せし軍師』の口角が、自信に溢れつり上がった。
「うー、もう眠たいの、後はみんなでやって」
「もう一頑張りでございますぞ、からくりの巫女様、何とぞ最後のお力添えを」
「仕方ないの、その後は必ずお昼寝するの、ふぁぁあああ」
まだまだあどけなさが残る、アシハラ南ツ国の『からくりの巫女』が、面倒臭そうに欠伸をした。
「あらあらあらあらどうしましょう? 無我夢中でやってたら、こんな所まで来てしまいましたわ」
「これこそ『口伝の女将軍』のお力、感服いたしました。この勢いで、全てを併吞致しましょう」
「あらあらまぁまぁどうしましょう? ここまで来たら、やるしかありませんね。はい、お任せ下さい」
いつの間にやら祭り上げられた『口伝の女将軍』は、あらまぁどうしましょうと言いつつも、ちゃっかり状況を楽しんでいた。
そして、四人の転移してきた英傑もとい、四人の馬鹿娘は、異口同音に号令をかけるのであった。畜生、こっちの都合も考えてくれよ!
「「「「全軍、突撃!!」」」」
突如上がった歓声と、地響きの様な足音が、土煙を上げて迫り来る! 祖礼はいよいよパニックになって、俺の腰にすがり付いた。
「ああ~、もう来ちゃったぁ~! このままじゃおしまいですぅ~!」
と、言われてもなぁ……。だが、不本意なれど、あの四人の現在進行形の不始末のカタもつけなきゃならん。とはいえ、素手でなんて絶対無理だ、瞬殺ミンチに決まっている。
「何とかしてやりたくても、丸腰じゃ無理だろう、何か武器は無いのか? 聖剣か何か!?」
俺がそう言うと、今までグズって泣いていた祖礼は、にぱあっと笑みを浮かべ、待ってましたとばかりに一振の剣を差し出した。
「流石は勇者として降臨した地郎様! その言葉を待っていました。地郎様にはこのアシハラ中ツ国開闢より伝わるビックリドッキリな聖剣、草薙の剣を託します。どうか存分にお使い下さい、そしてこのアシハラ中ツ国を「お救い」出来るか! このすっとこどっこい!」
恭しくもちゃっかりと、祖礼が差し出したのは、小学生の学芸会の小道具にも劣る代物だった。
それっぽい形に切り抜いたベニヤ板に、折り紙セットの中に二枚入っている金紙銀紙をペタペタ張り付けた様な物を聖剣として差し出すとはどういう了見だ。それっぽいのは、柄の中心に嵌まった宝玉みたいな飾りだけだろう。
口上違わず、確かにビックリドッキリしたよ、別の意味で。こんなふざけた聖剣で、一体何を救えると言うんだ、全く。謝れ! 今すぐ全ての聖剣魔剣に謝れ!!
「あら? お気に召しませんでしたか? じゃあ、こっちのエクスカリバーなんて如何ですか? お得ですよ」
「お前なぁ……」
軽いノリで寄越したのは、金紙銀紙をデザイン違いで張り付けただけの物である、それも……
「お前、ひっくり返しただけじゃねーか! それ、今ひっくり返しただけだろう!!」
「あっ、バレちゃいました? じゃあ、中を取って、エ草カリの剣バーって事でどうです? 」
「ふざけんなぁ~!!!!」
と、キレた俺が祖礼のこめかみを、拳で挟んでグリグリしたのが、丁度四方の軍勢が五十メートル辺りに迫って来た時である。
「こんなハリボテが何の役に立つ、今すぐ本物の聖剣を持って来い!」
「ひ~ん、一生懸命作ったのにぃ~」
「一生懸命作っただと!? 開闢以来伝わる伝説の聖剣を!! お前が今作ったのか!?」
祖礼のふざけた発言に、俺が怒りに任せて学芸会の小道具をひったくり、振り回したのが、四方の軍勢がだいたい三十メートル辺りに迫った所だろうか? そこで思いもよらず奇跡は起こるのだった。
「うわぁああああああ」
「ひぇえええええええ」
「どわあああああああ」
「あれぇええええええ」
と、四方から大勢の悲鳴が上がる。何事かと見回すと、俺が学芸会の小道具を振り回した事で、どうやら巨大なつむじ風が発生したらしい。そのつむじ風が、迫り来る軍勢を一網打尽に吹き飛ばしたのだ……
これ本物の聖剣だったんかい!?
「痛っ!」
「でっ!」
「あうう」
「きゅう」
つむじ風が収まって、俺の周りに華音、紺、璃瑠、そして依桐の四人が降ってきた。
「おい、お前ら何やってるんだ?」
ため息交じりに俺が声をかけると、四人は目をぱちくりさせて俺を見た。
「あーっ、地郎じゃん、何でこんな所にいるの?」
四人を代表するように、俺を指差して華音が驚いた口調でそう言った。
「バーカ、ぶっ飛んでったお前達を助けに、追いかけて来たからに決まっているだろう」
頭を掻いてそう答えると、四人娘は嬉しそうな笑顔で俺を見上げる。
「ウンウン、流石地郎だね」
頷き合って喜ぶ四人娘に、今まで溜まっていたものが氷解し、まぁまぁ無事でなによりと、ホッと脱力しながら俺は今までの経緯を確認する。
「それよりお前達、軍を率いるなんて、一体どうしてたんだ?」
俺はどういう経緯で、彼女達が軍を率いて戦争なんかをする事になったのか、それを聞いてみた。すると、華音が屈託の無い笑顔で、楽しそうに答えた。察するに、とても面白かったのだろうな、多分。
「あーっ、それね。ねぇ地郎、聞いて聞いて。私が落ちた所が、アシハラ東ツ国の前線司令部で、そこにいた一番偉い人が、異世界から来た私を、予言に有る伝説の女王陛下だって言うのよ」
「私もそう、降臨せし軍師だって」
「あたいは、からくりの巫女って言われた」
「私(わたくし)は、口伝の女将軍……、でしたっけ?」
四人とも、俺とだいたい同じ境遇か。
「ふんふん、それで?」
俺が次の話を促すと、華音は楽しそうに話を続ける。
「でね、敵対している四勢力が有るから、そいつらを倒して、アシハラ世界を統一する手伝いをしてくれって言うから、手伝っていたの。勝ったら地郎やみんなを探す手伝いをして、統一した世界の法律に、私の望む法律を作ってくれるんだって、良いでしょう? まずは最大勢力の国を、合従連衡で滅ぼして、それから残りの三ヶ国を制圧する予定でね、一年位かける作戦だったのを、僅か数時間で成し遂げる所だったのよ。凄いでしょう」
一気にそうまくし立てた華音は、満面の笑みで、誉めて誉めてと、目で訴える。他の三人も同様に、
紺、璃瑠、依桐もウンウンと頷いているところを見ると、皆同じような条件を提示されていたのだろう。なるほど、人が心配していた時に、異世界をエンジョイしてた訳だ。俺は全員無事で安心したのと、コイツらのバイタリティに呆れたのと、心配していた自分自身に馬鹿らしくなったのが混じり合った、複雑な感情のため息をついた。
「まぁ何にせよ、みんな無事で本当に良かった。一つ間違えたら、俺はお前達に殺された後、四人で殺し合う可能性も有ったんだからな……」
一応安堵した俺がしみじみとそう言うと、四人の娘の顔色が変わった。自分たちが置かれた状況と、無邪気にやろうとしていた事の本質を再確認した彼女達は、一瞬で般若と化して、自分がさっきまで率いていた軍勢に向き直る。
「「「「あんた達、騙したわねぇ~」」」」
底冷えのする声音と口調でそう言うと、四人は阿修羅の如く襲いかかる。彼女達が所属していた軍勢の面々は、口々に「お許しください」とか「お、お助けー」とか叫びながら、蹂躙されていく。おーい、奴らも知らなかっただけで、悪気は無かったんだろうから、ちゃんと手加減するんだぞー。
眼前で繰り広げられる蹂躙劇は、もはや言葉に表しがたく、ちゅどーん、ずばばばば、ドガッ、ガスッ、えぐりっ、といった擬音が相応しい様相を呈している。ようやく肩の荷を下ろした気分で腰をおろし、その光景を眺める俺の隣で祖礼が例の『古事記』になにやら記述を加えていた。何を書いているんだと、疑問に思った俺は覗いてみると……
「えーと、四つの国に転移してきた英傑は、アシハラ中ツ国に降臨した勇者に心服し、自ら配下として馳せ参じた、これによりアシハラ中ツ国は四方の国の平定に成功する。こうしてアシハラ世界は勇者『アシハラの四股男』こと、驚天動地郎の下に統一され、永劫の歴史を歩むのである……。うん、こんな物で良いか」
「あのなぁ……」
「どうされましたか? 地郎様?」
記述の内容に呆れる俺に、祖礼は顔を上げて、にぱっと笑う。
「どうされましたかって祖礼、それは予言書じゃなかったのか?」
「はい、こうして予言が成就したので、ここから先は英雄譚にクラスチェンジです」
「クラスチェンジ?」
「はい、時代と共に進化する予言書ですから、時代に合ったニーズに応えるのは、当然の事です。えっへん」
そのニーズとやらは、何処に有るんだ? というツッコミをこらえ、俺は祖礼に現実を伝える。
「なーにが『えっへん』だ、俺は別にこのアシハラ世界を平定して統一した訳じゃ無いぞ」
という俺を、不思議な物を見る様な目で見ながら、祖礼はちょいちょいと指を差した、その方向に目をやると……
「やったわよ、地郎。コイツらみんな、本国の連中も含めて地郎に忠誠を誓うって。流石地郎ね!」
四方の国の軍勢を、散々に叩き伏せた華音、紺、璃瑠、依桐の四人は、やりきった表情で俺に笑顔のピースサインを送って来た。俺に忠誠を誓うって、おいおい余計な事するんじゃねぇよ! これから日本に帰るんだぞ、どーするんだよ、これから!?
「馬鹿! 余計な事するんじゃねぇ! 何を考えているんだ、お前達は!!」
足を踏み鳴らし、四人の娘に抗議する俺の姿を見た四方の軍勢は、何故か感動の表情を浮かべて跪く。
「おおっ、これこそアシハラの四股男様……」
「アシハラの四股男様」
「ありがたやありがたや、生きてアシハラの四股男様にお目にかかれるなんて……」
俺に向かって跪く軍勢に、祖礼はしてやったりの笑顔を浮かべる。そんな祖礼に、華音は声をかけた。
「ちょっとアンタ、地郎が世話になったみたいね、礼を言うわ、ありがとう」
「いいえ、お礼だなんて、とんでもありません。アシハラの四股男様のお世話をするのは、我が一族の勤めですから」
「そう、で、アンタに聞きたい事が有るんだけど」
「はい、何なりと」
「このアシハラ世界の、婚姻の常識を教えてくれない?」
「婚姻の……、常識ですか?」
「そう、例えばハーレムとか側室制度ではなく、序列を着けない一夫多妻なんて……有る?」
何を聞くのかと思えば、一夫多妻って……
「基本的にこのアシハラ世界は、一夫一婦制ですね。権力者ならばハーレム側室は当たり前ですが、同格の夫人にするというのは聞いた事がありません」
祖礼の答えに、一瞬眉をひそめる華音だったが、直ぐに名案を思いついたらしく、祖礼に確認する。
「でもさ、でもさ、今地郎がアシハラ世界を平定した訳じゃん」
「はい」
だから、してねぇって。
「だったらさ、そういう風な、法律を作って、改める事は出来ない?」
華音のおかしな質問に、祖礼は眉をハの字にして、記憶をたどる様に考え、答えた。
「確か……初代のアシハラの四股男様が、そういう方で、幾人もの正妻を持ち、平等に愛したと、伝記には残っています」
「じゃあ」
期待に輝く華音だったが、祖礼はすまなそうに話を続ける。
「ですが、幸せは長く続きませんでした。沢山の正妻に囲まれていたアシハラの四股男でしたが、知らず知らずのうちに、とんでもない方から凄まじい嫉妬を受けていたのです」
「嫉妬?」
「はい、嫉妬をしていたのは、アシハラ世界の最高神ツクヨミでした。自分は天地創生から今まで独身を貫き、人間の為に禁欲して尽くしているのに、アシハラの四股男め、羨まし過ぎる! 許さん! となって、或る夜アシハラの四股男の物を、もいで行ったとの事です。それ以来アシハラ世界は一夫一婦が定着しています」
その話しに、思わず内股になって、股間を押さえる俺。もがれるのはたまらんぞ。
「そっかぁ~。じゃあ仕方ないわね、撤収よ、撤収」
あっさりアシハラ世界に見切りを着けた華音。それに呼応する様に、璃瑠と紺がビートル1の修理を終えた事を伝える。
「華音~、地郎~」
「修理終わった~。早く帰るの~」
二人に向かって手を上げて、華音は返事をする。
「わかったわ~、今行く~。さぁ、帰りましょう、地郎」
「お、おう。じゃあな、祖礼。世話になった」
あっさり帰る事になったが、これで良いのだろう。なにしろ俺達は異世界人なんだから、これ以上アシハラ世界に踏みとどまってはいけない。
「はい、アシハラ中ツ国を救って頂き、ありがとうございました、地郎様。またお会いしましょう」
「じゃぁまたね、祖礼」
俺は笑顔で手を振る祖礼に、別れの挨拶をしようとしたが、助手席の華音に押しのけられ、挨拶の言葉を奪われた。何、またね?
「じゃあ地郎、日本に向かって、レッツらゴー」
「「「ゴー」」」
「はいはい」
俺はアクセルを踏み、例の赤いレバーを引いて、日本へとビートル1を走らせるのだった。
騒動の翌日、大騒ぎになった学校中を
「大丈夫、ちょっとしたトラブルよ、心配無いから」
と、華音は無理矢理押しきって、力業で誤魔化すと、放課後の生徒会室で他の三人娘に向かって宣言する。
「さぁ、昨日の一件で、地郎のビートル1は、ちゃんと異世界を行き来する事が出来ると実証されたわ」
その言葉に紺、璃瑠、依桐は瞳を輝かせて頷いた。
「じゃあ、かねてよりの計画を実行に移すのね」
「ええ、勿論よ!」
「アタイも頑張る」
「頼りにしてるわ、璃瑠」
「私(わたくし)も、微力ながら」
「ええ、依桐、お願いするわ」
盛り上がる四人を意図的に無視し、俺は生徒会の後片付けを黙々としながら、四人の餌食にならない様に、エスケープの機会を伺っていたのだが……
「ほら地郎、アンタも何か言いなさい」
「へっ、俺?」
見つかってしまった俺は、話しの見えない無茶振りに面食らってしまった。
「そーよ、部長になるんだから、シャンとしなさい、シャンと」
「部長? 何の?」
話しの急展開について行けない俺は、嫌な予感しかしない華音達の思惑を聞いてみた。すると、華音はドヤ顔で俺にこう答えた。
「勿論、新部活、週末異世界探検部の部長よ、そんなの決まっているじゃない!」
「週末異世界探検部だぁ~!? 顧問は一体どうするんだ、こんな怪しげな部に、顧問なんて着く訳が……」
「それなら安心よ、手を打ってあるわ。入って」
華音の声に応え、生徒会室の扉が開いて、あり得ない人物を目の当たりにした。
「ハァイ、地郎様。これからも宜しくです~」
「そ、そ、そ、そ、祖礼!? おま、何でここに」
驚いて詰問する俺に答えたのは、またしても華音だった。
「稗田祖礼先生、私がスカウトしたの」
「そーでーす。担当教科は古代史で~す。そしてぇ、週末異世界探検部の顧問を仰せつかりました」
なんだってぇ~!?
「さぁ、理想の世界を探すわよ!」
「嫌だ! 断固断る!!」
こうして俺の意思とは関係無く、週末異世界探検部とやらが爆誕した、トホホ……
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