第27話 グレートドラゴンとの戦い

 俺は前に座るベルダの身体をゆすりながら、声をかける。


「ベルダ! ベルダ! 大丈夫か?」

「だ、だだ、い、だいじょうぶだ、……大丈夫!」


 気合を入れなおしたようだ。ベルダの精神力は中々強いらしい。

 そして、ベルダは右手を挙げる。


「しっかりしろ! それでも栄えある竜騎士団の一員か!」

『『は、はいっ』』


 ベルダの声で、数人の騎士は気合を入れなおしたようだ。

 返事をすると同時に、ワイバーンの制御を取り戻そうとする。


「はやく立て直して、戦線に復帰しろ」

『『御意ッ!』』

 

 ベルダは右手を降ろして言う。

「騎士たちが復帰するまでの、時間稼ぎをしないとな」

「手伝おうか?」

「いや、まだ大丈夫だ。不意を突かれなければ咆哮も耐えられる!」


 そういうと、ジールを駆って再び急降下を開始する。

 そしてジールがファイアブレスを吐いた瞬間、


 ――GIIIAAAAAAAAAAAAA

 地竜は咆哮すると同時に、ブレスを吐いた。


 ジールのファイアブレスとは違い、純魔力のブレスだった。

 ジールは身体をひねってかわそうとするが、間に合わない。


 俺は自分たちに迫るブレスを見たとき、一瞬で理解して、手を向ける。

 そしてドラゴンブレスを【破壊】した。

 ブレスはその形状を保てなくなり、大気中に魔力が霧散する。


「な、何が起こったのだ?」「がぁ……?」


 ベルダとジールが、突然ドラゴンブレスが霧散したことに困惑している。


「どうやら、俺はブレスを壊せるらしい」

「エクス一体、何を言って……」

「とにかく、壊せることが分かった。理由は後で話そう」


 破壊神の能力を使えば倒せる。それが突然わかった。理解できたのだ。

 もしかしたら、破壊神からの神託なのかもしれない。


 今は破壊神のことより目の前の地竜のドラゴンゾンビをどうにかするのが先だ。


「ゾンビのくせにブレスと咆哮の使い方がうまいな……」

「ああ、そうだな。ゾンビだと思って甘くていたかもしれない」


 ゾンビは身体が腐る。脳も当然腐っていく。

 個体にもよるが、思考能力が落ち、戦闘が下手になるのが普通である。


「ブレスと咆哮を組み合わせてくるなら、一撃離脱作戦は通じない」


 そう言ってベルダは考え込む。新しい作戦をひねり出そうと考えているのだろう。

 エルダードラゴンのジールはともかく、ワイバーンたちには一撃離脱は無理だろう。


「そうだな。俺がやる」

「エクス、それは危険だ!」

「もとより、俺に足止めを頼むつもりで連れてきたんだろう?」

「それはそうだが、グレートドラゴンだとは思わなかったのだ」

「大丈夫だ。俺はあいつを倒せる。そう理解できた」


 それも神託だろうか。

 ブレスを壊せるとわかったときに、地竜も倒せると理解できた。


「理解?」


 ベルダはきょとんとしている。


「詳しい話はあとで話すよ」

「ああ、聞かせてもらうが……」

「地竜の前方に急降下してくれ。俺が飛び降りたら離脱して欲しい」

「そんな、無茶だ」「が、があ……」

「大丈夫だ。命を捨てるつもりはかけらもない」

「……信じてよいんだな?」「がぁ?」

「ああ、信じてくれ」

「わかった。絶対死ぬなよ」「がぁ!」


 そしてベルダはジールを駆って、地竜の前に急降下する。

 高度が下がったところで、俺は飛び降り着地する。

 地竜は俺にはあまり関心はないらしい。

 急降下してきたジールの方を向いて地竜は口を開けた。


 ――GI……

「吠えさせるか!」


 俺は一気に間合いを詰め、地竜の頭に手を触れた。

 ――ボギッ


 嫌な音がして地竜の頭骸骨が砕け、それからボンっと頭が弾ける。

 距離が近い方が、破壊スキルの威力が高まるのだ。


 頭を吹き飛ばしたぐらいでは、地竜のドラゴンゾンビは止まらない。

 だが、頭が無くなったら、ブレスも吐けず、咆哮することもできない。

 視界と聴覚も失っている。

 地竜を完全に無力化することに成功したのだ。


「すぐに、解放してやる。安心しろ」

「………………」


 聴覚もないので地竜には何も聞こえてないのだろう。

 それはわかっているが、言わずにはおれなかった。


 頭を無くしても未だ足を止めない地竜を破壊スキルと剣を使って解体する。

 そして魔石を取り出し、完全に止めた。


「安らかに眠ってくれ」


 俺は地竜のことを神に祈る。

 俺が会ったことのある神は破壊神だけなので、祈りの対象を破壊神にしておいた。


 すると、後ろにベルダを乗せたジールが着陸する。


「終わったのか?」

「ああ、地竜の魂は天に還った」

「本当にグレートドラゴンのゾンビを倒すとは……」


 そう言いながら、ベルダはジールから降りようとする。


「降りるのは待ってくれ。まだ終わってない」

「む? どういうことだ?」


 ベルダは納得していないようだが、ジールから降りるのをやめる。

 同時に前方から低い声が聞こえてきた


「……よく気づいたな」

「ゾンビの割に動きがやけによかったからな」


 術者が近くにいて、ゾンビを操っているのだと俺は考えていた。


「手塩にかけたドラゴンゾンビを壊された代償を支払ってもらうことにしよう」


 そういいながら、術者は姿を現した。

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