第24話 帰還

 バジリスクを倒した後も、エルダードラゴンのジールが魔獣を追い込んでくれる。

 それを俺は剣で倒していった。


「ジールは凄いな。おかげで狩りがすごく楽になるよ」

「そうか! それなら良かった」


 俺がジールを褒めると、ベルダは自分のことのように喜んでいた。


 バジリスク級の魔物を合計で二十頭倒したところで、戦利品がいっぱいになった。

 鞄はもうパンパンだし、冒険者セットに入っていた空の袋もいっぱいだ。

 徒歩で帰る場合、戦利品の大半をあきらめねばならなかっただろう。


「もうこれ以上は戦利品を運べないから、ジールに追い込まなくていいと伝えて欲しい」

「わかった。呼び戻そう」


 ベルダは胸から笛を取り出して吹く。

 相変わらず笛の音は聞こえない。だがジールには聞こえているようだ。

 すぐにこちらに戻ってくる。


「ジール、偉かったぞ」

「がぁ! がぁ!」


 ベルダに褒められてジールはとても嬉しそうだ。


「ジール、ありがとう。凄く助かったよ」

「がぁ」


 ジールは苦しゅうないと言った表情で、ドヤ顔をした。

 竜というのは、どうやら、とても可愛い生物だったらしい。


 その後、俺が死骸を燃やそうとしていると、

「があ!」

 ジールが炎のブレスを口から吐いて燃やしてくれた。

 エルダードラゴンだけあって、強力な火力だった。



 その後、俺たちはジールの背に乗せてもらって、王都へと帰る。

 ベルダは既にフルフェイスの兜をかぶっていた。


 ジールは流石に速い。あっという間に王都に到着する。

 上空から王宮近くにある竜騎士団の詰め所にある竜舎へと降りるのだ。


 俺はジールから降りると、深々と頭を下げる。

「本当にありがとうございました」


 周囲に他の人もいるので、礼儀正しくしなければならない。


「うむ。少年。息災でな。何かあれば詰め所に来るがよい」

「はい」


 そしてベルダは俺の耳元でささやく。


「今度、エクスの家にも遊びに行こう」

「お待ちしております」


 家の場所は道中教えてあったのだ。




 俺は竜舎の管理人に荷車を借りると戦利品を詰め込んで冒険者ギルドへと向かう。

 ギルドの建物の前に荷車を止め、俺はギルドの受付へと直行した。


「魔物を討伐したから、報奨金の支払いと戦利品の換金を頼む」

「冒険者になってのはじめての冒険、ご無事で何よりですよ」


 受付は笑顔で応対してくれる。

 だが、いつも俺を世話してくれている冒険者たちが寄ってくる。

 どうやら、今日は休みにしてギルドの飲食スペースで朝から飲んでいたらしい。


 冒険者は体力勝負の仕事だ。それに危険と隣り合わせ。

 だから、金を稼いだ後には、しばらく休憩をとるのが普通である。

 そして冒険者たちは商隊の護衛でかなりの額を稼いだあとなのだ。


「おいおい、エクス早かったな。大丈夫か」

「獣の山脈に行くって言ってたよな。問題でも起きたのか?」


 冒険者たちは心配してくれている。それもそのはずだ。


 獣の山脈までは、急いでも片道三時間はかかる。そして魔物の討伐にも時間はかかる。

 大急ぎで済ませても討伐だけで三時間はかかると考えるべきだ。

 合計で九時間で帰ってこられたら、充分早い帰還と言える。


「心配してくれてありがとうな、だが、問題なく狩りは終わらせた」


 俺はバジリスクなどの魔石二十個をカウンターに並べていった。


「これは見事な魔石ですね! もしかしてバジリスクとか狩りました?」

「狩った獲物の中にはバジリスクもいたな」

「す、すごいです。先輩!」


 受付担当者は後ろから先輩職員を呼んで二十個の魔石の鑑定を始めようとする。


「戦利品も持ってきたから、それも頼む」

「はい、わかりました」

「荷車で運んで、今はギルドの外に置いているんだ。すぐに運んでこよう」


 俺がそういうと、冒険者たちも受付も驚く。


「そんなにですか?」

「荷車って、そんなに戦利品を運んできたってのか?」

「ああ。幸運なことがあってな。あとで説明しよう」

「暇だから、運ぶのを手伝おうじゃねーか!」

「助かる」


 冒険者たちに助けてもらって、俺は戦利品を受付へと運ぶ。

 バジリスクの爪や牙、血や眼球。その他魔物の死骸から獲得したものだ。


「こ、こんなにですか?」

「応援お願いしまーす」


 冒険者ギルドの奥の方から職員が数人出てきて、手分けして鑑定を開始する。


「鑑定終了まで少しかかります。すみません」

「いや、気にしないでくれ。急いでいないからな」

「ありがとうございます」


 ギルド職員たちが動き始めると、俺や冒険者たちにはやることがない。


「荷物運びを手伝ってくれたお礼に、何かおごろう」

「お、さすがエクス。若いのにわかってるねぇ!」


 冒険者たちに酒をおごり、俺自身も定食を頼んで食べる。

 ギルド食堂の定食は、ボリュームが多くて、味もおいしいのだ。


「で、その、大量に魔物を狩れて、すぐに帰ってこられた幸運ってのを教えてくれ」

「わかった。獣の山脈に向かう途中に、ダンジョンがあるだろう?」

「ああ、あるな」

「そこで、昔の知り合いに会ってだな……」


 俺の経緯説明を冒険者たちは真剣な表情で聞いてくれた。

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