第6話

「今回俺はそのもう半分を引いたってことですか」

「うん、そういうこと」

「じゃあ、仕方ないですね」

 先輩と俺は笑っていた。

 当然だ。これは二人の新しいスタートなのだから。

 俺は俺の、先輩は先輩の。

 それぞれ新しい道へ進む一歩を、今踏み出そうとしている。


 先輩のスマホがまた振動する。


 きっと、あの彼氏からの呼び出しだろう。

「いってらっしゃい」

 自分でもびっくりするくらい清々しい声が出た。

 失恋したときの人間はこうも吹っ切れるらしい。

「いってきます」

 そう言うと、先輩は駆けていった。

 また昨日のように、俺だけの図書室になり、俺は窓の外を見た。

 サッカー部や野球部が大きな声を出して練習している。

 吹奏楽部の管楽器の音が聞こえる。

「夏休み、どうすっかなあ」

 海やプールにいって涼みに行こうか。

 で川遊びもいいかもしれない。

 でひたすらゲームも悪くない。

 まあ、なんにせよ。


「彼女、欲しいよなぁ」


 そんな言葉が、なまぬるい風に乗って飛んで行った。

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SFSS(すこしもふしぎではないショートショート) ヨシダ @yoshida_unkonow

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