第5話

 昨日と同じように返却された本を戻していると、いつものように先輩が俺に話しかけてきた。


「キミってさ、パラレルワールドって信じる?」


 一瞬、どきりとした。

 昨日と同じ質問を先輩が投げかけてきたのだ。

 もしかすると、昨日をループしているのではないだろうか。

 確認をすべく、先輩に応答する。

「また同じ質問ですか?」

「昨日は結局信じるか信じないか聞けなかったしね」

 どうやら違ったようだ。

「まあ、あればいいなってぐらいですよ」

「信じるってことでいいんだ」

「ええ、まあ」

 今日の先輩はやけに白黒はっきりさせたがる気分らしい。

「今日はやけに聞いてきますね。どうしたんですか」

 気になったのでそのまま疑問を投げかけてみる。

「まあね。ちょっとこの話をしようかなって思ってたんだよ」

 先輩はそう前置きすると、話し始めた。

「もし━━━━」


 その二文字が聞こえた瞬間、虫の知らせというものなのか、先輩が何を言うのか分かった気がした。


「━━━━もしね、パラレルワールドを100コ作ったとして、そのうちの半分は」


 これは恐らく、先輩の。


「キミと付き合ってた」


 ━━━━俺に対するお別れなのだ。


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