第3話
「でもパラレルワールドですか。もし移動方法なんてものがあったら行ってみたいですね」
やっと今日の分の仕事が終わり、一息ついたのでパラレルワールド物の小説を読みながら、先輩と先程の話題について話していた。
「あれ、意外だね。私という女がいながら何か不満でも?」
「むしろ不満しかないんですけど」
『それに━━━』
そう言いかけて、出てくる言葉を飲み込んだ。特に言う必要もないだろう。
きっと先輩は気にしないだろうが、俺自身が気まずくなってしまう。少し話題を逸らすため、すぐに会話を続ける。
「もしかしたら別世界の俺はもっと面白そうなことをしてるかもしれないじゃないですか」
「例えば?」
「スポーツ万能で女子からモテモテだったり頭脳明晰で飛び級してたり」
「キミはたまに小学生みたいなことを言うよね」
「初心忘るべからずって言いますし」
「一回辞書を引いてみてね」
先輩にツッコまれたのは癪だが、なんとか話題を逸らすことに成功した。
突然、受付に置いていた先輩のスマホが振動する。
「ちょっとごめんね」
そう言いながら先輩はスマホを取って電話に出た。
「うん、今終わったとこ━━━━校門のとこ━━━━うん、分かった━━━━それじゃ━━━━」
通話が終わったのか先輩はこっちに来ると鞄を持って、今日はお開きだと俺に伝えてきた。
「それじゃ今日はお疲れ。また明日ね」
そういうと先輩は手を振ってぱたぱたと廊下を通って階段を下りていく。
『それに、そんなこと言ってると彼氏さんがそっぽ向きますよ』
俺が言いかけて止めた言葉が脳裏を過ぎる。
「別になんとも思ってねえっての」
俺しかいなくなった図書室で、そう呟いた。
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