第2話
「俺はね、飽き飽きしてるんですよ」
放課後、返却された本を元の位置に戻しながら、俺は先輩に抗議した。
事前に先輩に言われていたことに加えて、定期的な本棚の整理、新しい書籍の追加など、課された仕事は俺一人で成し遂げるには膨大な時間がかかる。
我慢の限界が来ていた。
今日こそは俺がどれだけ不満を募らせているかを先輩に訴えて、ブラック企業もびっくりなこの環境を改善してもらうのだ。
「たった一人の後輩が、一生懸命に仕事をしてる姿を見て心が痛まないんですか?」
「キミが頑張っている姿を見ると元気が出てくるね」
「まだ整理してない本がこんなに残ってるんですよ」
「それだけキミの雄姿を眺められるってことだね」
「俺に何か言うことは?」
「頑張ってね」
褒め言葉しか使われていないのにちっとも嬉しくなかった。
「先輩は日本語が堪能ですね」
「でしょう?難しい表現を自在に使うことが言葉に詳しいと思っている人がいるみたいだけど、老若男女問わず理解できる言葉遣いこそが真に言葉を理解していると思うの」
先輩は行間が読めなかったらしい。
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