SFSS(すこしもふしぎではないショートショート)

ヨシダ

第1話

「キミってさ、パラレルワールドって信じる?」

 不意に先輩が、本の整理をしていた俺に問いかけてきた。

 パラレルワールド、並行世界、バタフライエフェクト。

 そんな単語が頭の中を飛び交い、ひとつの言葉となって俺の口から吐き出される。

「パラレルワールドが存在したら、きっと先輩は俺に仕事を押し付けない真面目で優しくて素敵な人なんでしょうね。」

 冷やかな口調と視線で先輩を刺してみたが、当の本人はけらけらと笑って受付でくつろいでいる。

 

 俺と先輩は図書委員である。

 

 元々本を読むのは好きではあったし、『図書委員の仕事があるから』と塾を合法的にサボれるのが魅力的だったので立候補した。

 もしあの時に戻れるのならば、俺は手を挙げている自分を殴ってでも図書委員になることを阻止しているだろう。

 図書委員になることが決まり、先輩に挨拶ぐらいはしておくべきだろうと図書室の扉を開けた。

 図書室で顔合わせをするなり、先輩はこう言った。

「昼休みは毎日ここで受付をすること。貸し出し管理のカードはこれ。週一の委員会にも参加してね?あ、それと━━━」

 そして先輩は、とんでもないことを言い放った。


「私はここに座ってるだけだから、あとはよろしくね?」

 

 俺の奴隷生活の始まりだった。

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