星のくず
綺麗な月、と隣の少女は言った。
私は手元の手帳を閉じ、青空を見上げる。太陽の明るさに眉をしかめてしまう。
薄い雲の流れる空に、ほんのりと白く光る月があった。
砂の星みたい。少女は空想じみたことを言った。
きっと、あの星にはウサギやカニがいて、星の砂……星のくずを口いっぱいに食べて生きてる。星のくずは金平糖みたいに甘いけど、口の中で優しくはじけて心がふんわりと空に浮かび上がるの。そんな星のくずは地球にも降ってくることがある。ピカピカと光る星のくずをひとくちほおばると、身体が宙に浮かんで月までひとっとびよ。月についたら金の刺繍のドレスを身にまとって、みんなのお姫様になるの。
少女は立ち上がり、見えないドレスの裾を持ちくるりと一回転した。
あなたは王子様じゃなくて執事ね。白いタキシードを着て、いつも私の隣にいるの。
私は片膝立ちになり、少女の手を取って口づけをする。仰せのままに、お嬢さま。
いつも私の言うことを聞くのね。少女はクスリと笑う。
ずっと、私の空想につきあってくれる?
もちろん。
王子様になれなくても?
もちろん。
私がいなくなっても?
もちろん。
口の中で星のくずがはじけた。
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