第11話 余命10カ月

「少し話がある」


俺は今電話をしている。下手したら学校にも通えなくなる、大事な電話だ。


「ようやくお覚悟が決まりましたか?母方様もお喜びになられますよっ」


ふふふ、と不気味に笑う声、クソババアの護衛の一人、年齢は俺と同じだが実力は上位、だが、ひどい人生を送ってきたのは、唯一俺と同じところだ。


そんな奴になぜ電話しているか、それは―――――




「ある女子を助けたい、、、ですか?そんなことをするだけで、一つだけ言うことに従うと?」


「ああ、言うからには、しっかり従うよ。それで、手伝ってくれるのか?」


「まあ、組織を動かすには母方様のお許しが必要ですが、私だけで良いのなら、今からでもそちらに向かいますよ?ちょうど組織も暇してますし、、、ですが、本当に約束は守ってもらいますよ、、、あと、母方様に決めていただきますので」


あのクソババアに知られるのは少々嫌な気がしたが、頼んでいるこっちが無理を言うわけにはいかない。まして、知らせなかったことがバレたらあのクソババアがより激怒して、俺の周りにも危害を加えてくるだろう。


「かまわない、、、頼んだ」


「はい、取引成立です。ご依頼通り徹底的に調べて、しっかりやりますのでご心配なく、、、と言っても、大体正体はわかる気がするのですが、、、、、後日また、連絡します」


ぷつりと電話が切れる。俺は覚悟をした。手伝いの依頼を受けてもらう代わりの条件、それが、一回だけあいつらの組織のいう事に従うということ。もしかするともう学校には通えないかもしれない、街を自由に歩けないかもしれない、そんな思考をしてしまう度、今までもそうだったじゃないか、もしかするとご飯すらまともに食べれなかったあの生活より、いい生活が待っているかもしれないじゃないか、と、自分に言い聞かせる。


「ま、バレなきゃいいか、、、あ、豚箱ルート残ってたんだった、、、」


しまった、、、、、


「明日言わないようにお願いしてみるか、、、」


いや、それはそれで罪悪感が、、、よし、、、イチかバチか言ってみるか?


いや、だめだ。平野さんは男に対して不快な過去がある。もし突然現れた男にパニックを起こしたら、、、解決するまではダメか。


「とりあえず朝食か」


寮の1階にある食堂に行くと、すでに何人かが朝食を美味しそうに食べていた


「あ―――」


そこには、籠谷先輩も


「先輩、籠谷先輩」


籠谷「なんですか?優雅な朝食の時間の邪魔をしてほしくはないんですが」


響歌「できれば、昨日のこと秘密にしてほしいんですけど、、、」


籠谷「秘密にするに決まっているじゃないですか、今ばらせば由香ちゃんはどうなりますか?」


響歌「だから秘密にしてほしいとお願いしに来たのですが」


籠谷「それなら心配無用、由香ちゃんを助けてもらうまでバラさないでおきます」


響歌「うー良かったぁ」


本当に安心した。本当にいろんな意味で警察のお世話にはなりたくない。

それに

「残された時間は有効に使わないとな」


籠谷「?、なんのことです?」


響歌「あ、いえなにも」


言葉に出ていたようだ。気を付けなければ、、、て、この学校に隠れるようになってから、警戒心が緩んだ気が、、、ダメだダメだ!やっぱり運動とかして鍛えてた方がいいか、、、身体能力くらいは維持したいし、、、


籠谷「朝ごはんの時間、無くなりますよ」


響歌「げ!急げ急げー」


周りからは可愛い、、、という声が聞こえる。男だから複雑だけど、褒められてうれしくないことはない。


籠谷「にやついている、、、変態ですか?おとこなのに」


響歌「褒められて嬉しくないことはないですよ」


籠谷「はあ、心配になってきたわね、、、」


響歌「何がですか?」


籠谷「私はやめようと思ってたんだけど、ほかの部員たちが唐松さんと一緒じゃないと練習試合にはいかないって聞かないので、やはり助っ人参加してもらおうと思ったんですが、、、変態だし、練習期間だって少ないし、第一あなたが運動できると思えないのでやめましょうかね―――――


響歌「やります!参加させていただきます!」


「聞いた?唐松さんバスケ部の練習試合に助っ人参加だって」


「うわぁ、、、運動できるって言ってたけど、すごいわねぇ」


「足引っ張っちゃいそうで私は断っちゃいそうです、、、」


などと、途端にザワザワし始める


籠谷「なぜあなたにそんなファンがいるのか分かりませんが、、、宜しくお願いしますね。変態さん」


響歌「ちょ、先輩~!」


助っ人参加が決まってしまった、、、最近逃げ回ってたから足には自信があるが、バスケスキルはどうだろうか、、、


「心配だ、不安になってきた、、、」


プルルルル――


電話だ、


響歌「すみません、電話なので少し席外しますね」


籠谷「ええ」


電話の相手は、、、多分―――


ガチャッ


「お坊ちゃまっふふっおはようございます」


笑いをこらえながらも他の黒服達と同じ呼び方をしようとするが、こらえきれず笑い声が少し漏れる


響歌「朝早くからご苦労ですね、、、えらく早い折り返しだな、、、あと笑うんだったらいつも通りの対応で構わない」


「そですか、、、突然すみませんがあなたへの命令?指示?まあ、昨日言ってたあれが決まりましたよ」


響歌「はあ、クソババアはなんて?」


「一年以内に屋敷に戻ってくること、だそうです。それにしてもひどいですね、仮にもあなたは産んでもらった身なのですよ?」


響歌「それだけだろ、恩があるのは姉ちゃんくらいだ、生きるために誰にも助けを求めなかった、あいつはただ産んだだけだ」


「でも、結構緩いと思いませんか?今回期限はあなたが決めていいのですよ?」


響歌「それでも範囲は決まってるじゃないか、、、分かった、4月の進級前にそっちに向かう」


「わかりました。あ、あと監視を一人つけますので、お覚悟を、、、残りの生活を楽しんでくださいね!1年は危害は加えませんから!」


響歌「ああ、じゃあまた後日」


「ええ、ぱぱっとやっちゃいましょうね」


ぷつり、そうして電話は切れた。


残りの生活か、、、俺にとっては大事な、最初で最後になるかもしれない楽しい日々か、、、


俺は余命宣告をされたも同然、4月にすっと消えた方が自然だろうし、、、


「俺の余命は、、、10カ月か、、、」


残り少ない日々だ。救えるものは救おう、そして楽しもう、、、













この期限付きの楽園生活を――――――







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いちおうこれラブコメなんすけど、、、なんか軌道がずれてそう、、、

どうもアナザーです。ま、まぁ響歌ちゃんの一年はなんとかほのぼのさせたいなとは思ってるんですが、、、

面白かったらフォローと星をお願いします

次の話で会いましょう。ではでは~










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