第11話 買い物へ行こう

 刀を習い始めてもう早五か月たった。

 師匠曰くかなり上達が早いのだと。

 

 「刀の本質をしっかりと見極めておるのぉ。」


 とよく言われ少々天狗になったりするが‥‥

 毎日の師匠との打ち合いでそんな伸びた鼻をへし折られる毎日。

 型自体はかなり覚えることができてきたということでそろそろ本格的な技に移行しようというわけだがその前に息抜きもかねて買い物に行くこととなった。


 今欲しいものはいっぱいある。

 主に武器だ。

 目録帖は増やしておくに越したことはない。

 あぁ、今からでも楽しみだ。

 でもだからこそ—


 「師匠まだですかー」


 俺と師匠はかれこれ5時間このでかい森を歩いている。

 なのだが師匠の家は非常に森奥のため町まで行くのに非常に時間がかかる。

 もう辛いのなんのって。

 

 「もうすぐじゃ。もう着くはずじゃが‥‥おっ、出口じゃ。」


 そう師匠が指さしたほうには舗装された道が。

 やっとだやっと。

 舗装された道に入ると実に7か月ぶりの町が見えた。

 まあ、王都に比べたら劣るが。

 それでも感慨深いものが確かにある。

 これは五時間歩いた甲斐があったな。


 「失礼。身分証明書の提示をお願いする。」


 ああ、そうだった。

 町の門の前には衛兵の身分確認があるのだった。

 すっかり忘れていた。

 どうしよう。俺には身分証がない。


 「ああ。これでよかろう。あと、こやつはわしの孫じゃ。何分、森で育ったため身分証を持っとらん。あとでギルドでギルドカードを作らせるがそれまでの許可書をくれるかのぉ?」


 「ああ。そこの少年ついてこい。ご老人もご同行願う。」


 「は、はい。」


 衛兵に連れられるまま衛兵の詰め所らしきところに入る。

 そこは、うん。

 汗臭かった。


 「では、確認させていただく。名は何という?」


 「アキレスです。」


 「ほおぉ、珍しい名だな。」


 衛兵はそう言いながら紙に必要事項らしきものを書き込んでいく。


 「歳は?」


 「15です。」


 衛兵は、若いなぁ、と思ったのだろう。

 すぐにわかる。それにしてもこの衛兵すぐに顔に出るな。


 「人を殺したことは?」


 「ないです。」


 「ギフトは?」


 「黙秘します。」


 そう言うと衛兵は少し怪しいものを見るような目を向ける。

 そして、俺と目を合わせ心を覗くかのようにじっと俺を見る。

 その目は俺を深く見ようとしているのがよく伝わる。


 「‥‥そうか。しかし、まあいいか。次はこの水晶に触れてくれ」


 「はい。」


 この水晶は犯罪経歴を調べるためによく使われる。

 仕組みは、人を殺した場合人は魔物を倒した時と違い歪な魔力を吸収する。

 この水晶はそれを検知するといったものだ。

 殺してなければそのまま、殺してれば赤といったものである。

 当然、そのままだ。


 「よし、オッケーだな。ギルドカードを作るということなら滞在期間は一日にしておこう。ギルドカードができたら手間がかかるがもう一度ここに来てもらう。いいな?」


 「はい。」


 「じゃあ、この町を楽しんでくれ。」


 そう衛兵が言い解放される。

 いや、汗臭い空間はあまり好かないからな。

 でも、あの衛兵はいい奴だった。

 また、会えたらな。

 そう思ったのは俺だけではなかったのだろう。


 「あの衛兵、良い奴じゃったのぉ。」


 「ええ。今時あんな衛兵さんがいるんですね。正直ビックリしましたよ。」


 そうだ。

 町によってはギフトを深く問いただす衛兵もいると聞く。

 それを考えると俺はあたりだったのだろう。

 それにあの衛兵さんは適当な奴ではないとわかる。

 だって、俺の目をしっかり見てくれていたから。


 俺の久しぶりの町の訪問はいい訪問になりそうだ。

 だがまあ、はするが。も論悪いほうの。

 

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