第2話 無責任な期待
前世の記憶を取り戻してもうすぐ五年たつ。
あの日から俺はこの世界で強く生きるためにたくさん修練、勉強を積んだ。
そのおかげであろう。
基礎魔法はもともとの才能と相まってギフトなしで中級という歴史の偉人並みの記録をたたき出したのが8歳のころ。
それからは体もできてきたということで剣をはじめとした武器も習った。
武器は、前世でも銃だけでなく剣や槍、刀をはじめとした刃物も多く扱っており、その上で俺も扱えていたため武器の使い方が下手、ということではなく体が追いついていない状況であった。
それでもかなり使えるようになったおかげで今では三大流派の中の一つ剣神流の中級剣技までは扱えるようになった俺である。
前世もあるだろうがとてつもない記録をたたき出したとして、神童と今ではもてはやされている。
そんな俺が10歳になるのだが、この世界だと10歳になると神から
俺は前世では体も弱いほうで屈強ではなかったし武器も技術でカバーしているところが大きかったし、売り方も主に権力を笠に着たものや、弱みに付け込むようないわゆる弱者のやり方でしか生きていけなかった。
しかし、この世界では武器を売るのではなく使うものでありたいと思う俺もいれば、また武器商人となりたいと思う俺もいる。
まあそんなのは貰ってから考えればいい。
まだ1か月ほどあるのだから。
それに今日はあの娘が来ることだしな。
そう、俺の許嫁らしい。
実感が湧かないというのが正直なところだ。
散々、火遊びをした時期はあったにしろ結局結婚はしなかったものだからな。
「アキレス様ーレティア様がお越しになられましたよ。」
「ああ、今行くよ。」
「アキレス、遅いわよ!私が来たっていうのに!」
「ごめんごめん。その代わり今日は目一杯楽しませるからさ?」
「そ、そう?なら許してあげるわよ。」
このチョロい娘が俺の許嫁である。
しゃべり方からわかるようにツンツンしてるが根はチョロチョロである。
まあ、そういうとこがいいのだろう。
今のところ恋愛感情なんてものは湧きはしないが将来有望そうなので安泰である。
その日は言葉通り目一杯遊んだ。
彼女も帰ってディナーも食べて俺は一人部屋で考える。
この人生について。
そこで思うのは、ここまでの俺の二度目の人生はうまくいきすぎだ。
前世の、まだ若く先生もいたときあの頃は確か20後半だったかと思うがあの時、俺はその頃大口の取引をバンバン取り付けていた。
しかし足をすくわれ、殺されかけ先生に助けられた。
恥ずかしい限りだがその頃天狗になっていたのはいい思い出でもある。
その時に先生に言われたことは俺にとってのどでかい教訓だ。
それはありきたりのことだったが俺の中では先生の言葉として残っている。
『いいか■■人生ってのはいつも転んでは起き上がってっての繰り返しになってる。怖いことだがな、普通はちょっとちょっと転げるくらいだ。だが今のお前みたいに立て続けに幸福が続けば転んだときの転び方は尋常じゃない。それこそ死ぬなんてのはザラだ。俺も何人も見てきたそんな奴らを。だからお前に忠告しておいてやる。成功が少なくとも5年以上続いたならなぁ、何か大きな力をつけろ。例えば後ろ盾だ。ほかには自分が強くなるしかないがな。今はいい。ただ俺が死んだときお前は一人だろ?まあ、簡単にはくたばんじゃねえぞ?』
なんて言葉と会話。
今でも鮮明に思い出せる。
前世の記憶なのに不思議だが。
だから、余計に思う。
俺はどうなるのだろうか?
俺の頭には先生の最後の言葉が響いてならない。
予感がするが来年、たくさんのものを失う気がする。
予感だからってバカにするなよ?
これでも予感に従って生きて60までしぶとく生きたんだからな?
しかし、この時に抱いた予感はハズレはしなかった。
でも俺はまだ知らない。
彼が失うものを失うまであと1ヶ月。
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