異世界の武器商人
イケバナ
第1話 思い出した
どでかい街。
そこで俺は人に戦う武器を売ってた。
いわゆる、武器商人ってわけだ。
幼いころ両親がいたのかもわからねえが親に捨てられ、しっかりとした記憶があるのは孤児院での記憶。
そこを先生に拾われた。
武器商人の先生に。
先生は後継を探していた。そこに俺が、ってわけだ。
それから俺は先生のもとで学びに学んだ。
ご近所づきあいから、身の振り方に、武器の売り方まで。
そして俺が三十路に片足を突っ込んだころ先生は逝った。
大往生だとよ。
それからもう30年。
俺はいまだに生徒だ。
すまねぇ先生。
俺は、武器の売り方はわかってても、身の振り方は案外わからねぇもんさ。
それにしても、俺を討ちやがった銃、あれは俺が売った銃だ。
まあ、因果ってやつが先生の分まで巡り巡って俺のもとに届いたのだろうな。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
目が覚める。
片目から一筋の涙が流れる。
さっきの夢は何なんだ?
いや、夢じゃない。誰かの人生だ。
誰かのじゃない。
俺の人生だ。
アーストレヤ王国貴族三男アキレス・ジャーミールそれが俺だ。
今現在5歳のピッチッピチの幼子。
そこに俺が‥‥いや、そうじゃない。
思い出したのだ。
アキレス・ジャーミール、それは俺であって俺ではなかった。
転生というやつだ。
流行りに乗っかったにしてはあまりにも壮大なスケール。
馬鹿みたいに話に聞こえるが真実。
そう考えていた時に、誰かが俺の部屋に入る。
「アキレス様、もう朝ですよ?早くしないと朝食に遅れ旦那様に叱られてしまいますよ?さ、急いでください。」
「ああ、わかったよ。」
彼女はメイドの一人。
まあ、メイドの中でも俺専属だが。
彼女は俺が子供のころから世話をしてくれている。
それもあって、主従関係とは別にある種の兄弟のような信頼関係にあると思っているのは俺だけであってほしくないと思うところだ。
と、俺の記憶が戻る前のアキレスの記憶もすべてわかる。
それも、自身が体験したというように。
例えるのならまるで、記憶喪失になり記憶の戻った時に感じる時差のよう。
自分を置いて行って勝手に時間が流れていた世界のよう。
いや、そんな世界なんだ。
しかし、この感覚は妙だ。
まるで、地球にいた俺の意識がこの世界で育ったアキレスに引っ張られていく感じ。
何だろうか、いうならば勉強も暗記もせずに急に英語を本場のアメリカンよりも流暢に喋れるようになったようなそんな感覚。
つまり、俺の人生での感情が徐々に薄れ持っていた知識だけがこの世界で育った俺ことアキレスに吸い込まれていくような・・・・
「アキレス様、本当にお時間が不味いことになっております。すぐに、すぐに出てきてください!私の給料まで下げられちゃいますから!急いでください。」
はっ!考えふけってしまっていた。
これは不味い。
父、ラインバッハ・ジャーミールは厳しい。
優しいとこもあるが、万人が意識すればできることなどができないときは特に厳しい。
本当に、才能などが要因の時は怒りはせず励ましてくれるが。
そんないい父親だが怒られるのはごめんだ。
なので急いで寝間着からいつも用の服に着替える。
そして急いで食堂の食卓に着く。
良かった、まだ大丈夫なようだ。
と、思った直後、父が食堂に入ってくる。
あ、危なかったぁぁぁ!
それを見透かし、窘めるように俺を何秒か見た後もういいかと判断したのかみんなのほうを向いてこういった。
「おはよう。今日は確かアキレスは家庭教師との勉強があるはずだ。その年から学ぶということは大いなる意味を持つ。魔術もギフトがなくとも基礎4属性は使えるだろう?若いうちだと何でもできるから励みなさい。まあ、何でもできるからと言って寝坊はよろしくないがな。まあ、美味しそうなモーニングがあるわけだからもう食べようか。」
そう父が言うと皆手を組んで目をつむり祈りの姿勢をとる。
あぁ、ここは宗教的な国か。
なら無視はできないと思い俺を目をつぶり手を組み祈りの姿勢をとる。
そしてえ、全員で神への感謝を唱える。
「「「神よ、今日も食べられることに感謝を申し上げます。我ら子は今日も元気です。」」」
「ではいただこうか。」
そんな父の声で食卓には楽しい団らんの声が響く。
これを幸せと呼ぶのだろう。
だが、こんな幸せはもうすぐ壊れることなど知りはしない。
彼の幸せが崩れるまであと5年。
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