第3話 恩恵授与式
今日は、俺の誕生日であり俺が
非常に楽しみである。
今のところ魔法がよく使えているので魔力量も増加している。
また、武器を使った戦い方も学んでいる途中だ。
できれば魔法系がいいが、もろん剣などでも十分いい。
まあ、ここで転ばないことを祈りたいってもんだ。
まだ、力が足りないからな。
この魔物が蔓延る世界ではギフトは人生を大きく左右する。強ければ強いほど出世街道を通ることとなるし、弱ければ弱いほど転落人生を歩む。
それは平民貴族は関係ない。
悲しい話ではあるがこの世界では努力した力よりも生まれ持った力のほうが重要視されるようだ。
まあ、前世とそう変わりはない。
さて、俺はギフトをもらうため教会に来た。
そこには見慣れた人間もいるし、初めて見る奴もいる。
だが誰も彼も、子でさえも親でさえもそわそわしている。
そりゃそうだ。
これで人生が決まるっていうんだから。
うちの母も、いつもソワソワなんてしない父でさえもソワソワしていた。
俺もだが。
遠巻きに俺を見る貴族平民の子や親は口をそろえて言っている。
「神童のアキレスだ」「まだ若いのになんて賢そうなお顔かしら!」
と口々に褒めてくる。
気持ちがいい。
こうも褒められれば誰しも高揚するものだ。
たとえ褒められているほうが乾ききっているような老人でも。
はぁ、緊張する。
そう思っていると急にレティアが走ってきた。
「アキレスー!」
その姿は将来有望そうなレティアに似合ったおめかし姿だった。
その筋の紳士が見たら狂喜乱舞だろうなと思う。
それに、その筋の紳士だけでなく通り過ぎれば二度見をしてしまいそうなほどには十分かわいらしい姿だった。
少し他愛のない話をしながら笑いあっているとそこにレティアの両親たちも近づいてきた。
レティアの父であるエレネラ侯爵は非常に教育熱心で厳格な人と聞く。
まあ、言い方は悪いが俺の父とは少し観点の違う厳格さだと俺は思っている。
そう感じたのはレティアの話からで、ある時彼女が裁縫の勉強をしていたらしいが全くうまくできなかったそうだ。これは俺も見せてもらったがやり方はあっているが圧倒的に才能が足りないというのが俺の見解だ。
うちの父なら、「本当にできないのらほかのことを頑張れ」というが、彼女の父は違う「こんなこともできないのか?」だそうだ。
よく言うなら実力主義。悪くゆうならプライドが高いといったところだ。
俺はこういう人間が嫌いだが、一応義理の父になるのだから表面上は親しくして入る。これが夫婦そろってだからたちが悪い。
今回も表面上のあいさつをするがあまり気分は・・・・良くはないな。
◇
そうこうしていると時間になった。
教会の神父が何やら荘厳、そうな雰囲気でやってきた。
あぁ、こいつの目は駄目だと、俺の本能が告げる。
欲狂いだな。偶にいる、というか宗教がらみの奴はこういうやつが多いと俺は感じる。
はぁ、まあいいか。
俺には関係のないことだ。
神父の後ろにはこの世界で創造神として敬われている神の像がおいてあり荘厳さは増している。
そんな荘厳な雰囲気を纏わせた神父は荘厳に、そして無駄に長ったらしい話を始めた。
内容自体はいたって簡単だ。
十歳となり神から授けられる恩恵に感謝をしろという内容と、明らかに表面だけの祝福、そして恩恵をもらった後の話をされた。
そんなつまらない話が終わると遂に待ちわびた恩恵授与式が始まる。
式の流れはいたって単純だった。
十歳の子供が一人ずつ神父の前にある魔法陣の中へ入り、簡単な儀式的な呪文を唱える。そうすると魔法陣が光りだし光が収まるとなぜか恩恵の名が刻まれるという謎システムだ。
一人目は・・・・少年だ。
毎度毎度、神父が恩恵を授与される者の名を呼ぶので名前はすぐわかるが。
そうか、一人目の少年はサイラスというのか。
名を呼ばれ思い出した。
彼は男爵家の次男坊で何やら魔法がまあまあ使えるということで有望視されていて、今回の授与式の中でも注目の集まるうちの一人だ。
サイラスという少年は魔法陣の中で片膝立ちとなり両手を組み目を閉じる。
すると魔法陣が光りその光が彼の中へと入っていった。まぶしいな。
それと同時に神父の前へステータスを表示される画面が現れる。
それを目にし、神父が感心した様子で声を上げる。
「サイラス君のギフトは火の魔術Ⅱだ!火の魔術は戦闘に特化している素晴らしいギフトじゃ。その上レベルがもうすでに5じゃ。将来有望じゃのぉ。」
神父の声にサイラスは感動に打ち震えていた。そして両親がサイラスの元へ駆け寄り抱き合い喜んでいる。どうやら両親が望んでいた以上のギフトだったのだろう。
先ほど説明を忘れたがギフトにはレベルが存在する。レベルはⅠからⅩまで存在しているといわれている。レベルはあげれば上げるほど増えるということらしいが上がらないやつは一生上がらないことも多いそうだ。
その為、ギフトの初期レベルが高いというのはかなり優秀ということだ。
サイラスの火の魔術はありふれている。しかしⅠが多いためⅡというのは大きなアドバンテージということで優秀というわけだ。
優秀の度合いで言えばまあ中より上ってとこだが。
しかしレベルⅡ。いいと思う。
こうして初めからいいギフトが出るという後続者にとっては非常にハードルの上がる形で授与式は始まった。
まあしかし、結果は人それぞれ。
例えば中盤にギフトをもらったドリクという少年は子爵の三男で戦闘系が欲しかったにもかかわらず授かったギフトは研磨術のレベルⅠという残酷な結果。
ちなみに研磨術というのは鍛冶の最終工程で行われる武器の研磨の作業だがまあ当然、望んだものではないわけでありドリクは泣き、両親も悲しんでいた。周囲はあまりにも残酷ということで憐れんでいたがこれがもっとひどいと嘲笑に代わっていただろうというのが俺の感想だ。
と、結果は様々。
だが無慈悲にも授与式は進み遂にレティアの名前が呼ばれた。
レティナは先ほどの子らと同じように祈りをささげるようなポーズをとる。そうすると先ほどまでよりか幾分か強い光がレティナの体へ入っていった。そして神父はステータスを見るとギックリ腰を起こしそうなくらい驚いた。
「お、おぉぉぉぉぉぉ。剣術Ⅲに火の魔術Ⅱじゃと?!超逸材じゃ。それに火の魔術のⅢと言えば広範囲魔術も可能なレベル。将来は安泰じゃのぉ。」
周囲の皆も騒めく。それも当然。
理由は3つあり、まずギフトの数が多いこと。二つ目はギフトのレベルがすごく高いこと。三つめはこのギフトの組み合わせは火の魔術のレベルがⅢということもあって近距離、中距離、遠距離共に強い万能タイプだったからだ。
通常は三人ほどで組む戦闘班の仕事も彼女一人で補える。
この世界ではだれもが喉から手が出るほど欲しがる力だ。
レティナがこちらに駆け寄ってくる。彼女の親も珍しく満面の笑みで彼女を迎える。
彼女の親もこの結果には大満足なのだろう。
俺もレティナに声をかける。
「おめでとうレティナ!」
「ありがとう!これで私もあなたにふさわしくなったわね!」
俺にふさわしいか。恐らく学院の話や今後の話だろうが俺はまだギフトを得てない。
それに、転びそうな予感がする・・・・
「まだわからない。それに、俺がもっと上に行くかもね?」
「うぅ、遠くには行かないでよね?」
そう彼女は涙目になる。
「冗談だよ冗談。それに俺のほうが下のほうが確率的には高いよ。」
「大丈夫よアキレスなら!絶対私よりもすごいわ!」
「はは、ありがとう。じゃあ頑張るよ。」
ちょっと冗談を含んだがそうなってほしいものだ。
まあしかし、人生はうまくいった奴ほど大事なとこでつまずくと聞く。
俺は、嫌だぞ?
彼の幸せが壊れるまであと1分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます