鐘の音

IrisLovinson

鐘の音

始まりは時を2つに分割する。

それまでとそれ以降を分ける。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


終わりは時を2つに分割する。

それまでとそれ以降を分ける。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


始まりと終わりは時を2つに分割する。

その中とその外を分ける。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


だから始まりは尊い。

そこに意味を与えるのだから。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


だから終わりは尊い。

そこに意味を与えるのだから。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


だから始まりと終わりは尊い。

そこに意味を与えるのだから。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


境界は意味を与える。

あちらでもこちらでもない。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


見よ、今ここに意味は与えられた。

ここはあちらでもこちらでもない。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


世界は1から2、2から4、4から5となった。

あちらとそちらはこちらではない。

鳴り響け鐘よ。世界を照らせ。


ここに世界は鐘の音に満たされた。


私は鐘の音である。

あなたは鐘の音である。

鳴り響け鐘よ。世界を埋めよ。


あの人は鐘の音である。

かの人は鐘の音である。

鳴り響け鐘よ。世界を埋めよ。


あの空は鐘の音である。

この地は鐘の音である。

鳴り響け鐘よ。世界を埋めよ。


世界を生めよ。この世が鐘の音となるよう。


前になく後ろになく、左になく右になく、

上になく下にないもの。

そのうちここにないものが鐘の音である。

鳴り響け鐘よ。世界を震わせよ。


あなたがたの前になく後ろになく、

左になく右になく、上になく下にないもの。

そのうちあなたがたにないものが鐘の音である。

鳴り響け鐘よ。世界を震わせよ。


鐘の音は耳に聞こえない。鐘は世界を動かすのだ。


私達とあなたがた、ここに縁は生まれた。

分割されたものが縁の糸で繋げられた。

鳴り響け鐘よ。世界を紡げ。


過去と現在、現在と未来、ここに業は生まれた。

分割されたものが因果の糸で繋げられた。

鳴り響け鐘よ。世界を紡げ。


奏でよ鐘よ。鐘の音よ交じり合え。


ここに一人の青年がいた。彼は鐘に問うた。

鐘は答えなかった。それが答えだった。

鳴り響け鐘よ。何もない闇を照らせ。


ここに一人の少女がいた。彼女は鐘に問うた。

鐘は答えなかった。それが答えだった。

鳴り響け鐘よ。何もない闇を照らせ。


ここに青年と少女がいた。二人は鐘に問うた。

鐘は答えた。誰にも聞かれないように。

鳴り響け鐘よ。何もない闇を照らせ。


ここに答えを持った二人がいた。

そして二人の境界は取り払われた。

鳴り響け鐘よ。何もない闇を照らせ。


鳴り響け鐘よ。闇に光はあると。


祝福せよ。

祝福せよ。

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