&α 壽冢さん

「どうでしたか。男子トイレ体験コーナー」


「いやあ、最高ですね。なか、こんな感じなのかなって。すごくたのしかったです」


「はい。わたしたち一度も男子トイレ入ったことないので。新鮮でした」


「寸劇する声が聞こえてきたんですけど、なぜ私が告白した体に」


「いやあなんか、珍しい名字だなと思って。壽冢さん。しかも男のかたか女のかたか分からないほどお綺麗でいらっしゃる」


「受付のときにあらかじめどういう会話するかなって話し合ってたんですけど、そのときに名札とお顔が見えて」


「はあ」


「この後どうですか、壽冢さん?」


「うんうん。お暇ですか?」


「はあ?」


「いや。ここの受付ずっとやってるわけじゃないですよね。もうすぐアトラクションも閉館だし」


「え、なぜ私が」


「よければホテルとか案内しますよ?」


「ちょっ、と何言ってるか分からないですね?」


「わたしも」


「わたしも」


「はい」


「ひとめぼれです。あなたに」


「はい?」


「告白しますっ」


「わたしもっ」


「いや初対面でいきなり性別も分からない人間に向かって告白するひといます?」


「さっきの寸劇聞いてたでしょ。わたしと」


「わたしは付き合ってます。女の子ふたりカップル」


「ええ。ほほえましいかぎりです」


「壽冢さんも間に挟まりませんか?」


「ええ。そこがまったく意味分からないです」


「あ、もしかして、壽冢さん、わたしたちとは違う性別のが対象だった、とかですか?」


「いや、そんなことはないですけど」


「じゃあ」


「いいですよね?」


「なんなんですか、もう」


「どうですか?」


「だめですか?」


「どこですかホテルは」


「ここの隣の」


「グランドホテルの最上階」


「金持ちじゃねぇかっ」


「いや、金持ちというか」


「オーナーです、わたしたち。あのホテルの」


「は?」


「わたしたちは別に」


「壽冢さんがどちらの性別でも構いませんし」


「末永くお付き合いしたいと」


「思っております」


「じゃあ、行きましょ行きましょ」


「え。うわちょっ。え。え?」


 女性ふたりに両脇を挟まれて、連行される受付が一名。

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トイレ中に蹴ってくるやつ 春嵐 @aiot3110

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