赫い凶星と斬裂真剣


なんということも無い日だった。


もはや日常である、紛争。


主義主張があるのだろう。

大義があるのだろう。


小国の小競り合いの最中、赫い星が─────


「あれは・・・」


流れ星─────いや、そう断ずるにはあまりに禍々しい。

星は上空を飛び回る。


「なんだ、あれは・・・!?」


一度大きく輝いた──────









「うぐ、ぁ・・・」


何が、起きたのかわからない。


視界が砂が巻き上げられたように、何も見えない。

耳鳴りが酷い、何も聞こえない。

砂と一緒に、赫い魔力が渦巻くのがわかった。

その先に、青く煌めく瞳が見えた。


そこに居たのは────


「─────なんだ、アレは」


銀色の鱗と、翼と、尾。

黒い肌と、黒い服。

そして翼から溢れる、魔力。


アレが空から堕ちてきた。

そして自分の周りに転がる骸が、ヤツが原因だと理解した瞬間。


「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」


鼓膜を貫かんばかりに、あの怪物は咆哮をあげた。


「あ、ぁ・・・」


もうダメだ、自分はアレに壊される。

力が入らず、ただ見つめるしか出来ない間に、誰かが怪物の前に歩いて対峙した。


「─────はじめまして」


桜のような色の和服を着こなした女が、怪物に微笑んだ。

挨拶と同時に、彼女は刀を抜いた。


「私を呼んだのは、貴方ですね?」


彼女は、当たり前のようにそう言った。

何を言っているのかわからない。

けれど確かに、傍から見たら通じあっているのが分かってしまった。

理解できないのに、それが何なのかわかってしまう。


彼女たちは確かに、運命なのであると。



その後の事は、よく覚えてない。

暴風と鋼と光が、激しく衝突する死闘だったことだけはわかる。


最後に見た光景は─────



「■■■■■■■■■■ッ!!」


激しく咆哮する怪物が、翼から膨大な魔力放出する光景。

それは正しく、滅ぼす凶星の輝き。


極晃星スフィアノヴァ───抜刀・桜花天元斬裂真剣ブロッサム・ティルフィング


対し、静かに闘志を燃やして発現するのは万象断ち切る風の刃。

それは正しく、天元へ至る刃の煌めき。



生存者はこの後に知る、


あの怪物は、人造竜族。

凶星の原初────シュテル・ゼロ。


あの女性は、風の竜族。

斬裂真剣ティルフィング────桜天寺彩花。


全てを理解した。

あの二人の宿命は、なんびとたりとも間に入ってはならぬのだと。

あの二人は闘争によって、通じあっているのだと。

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