【2021バレンタイン】クウティアの部
「僕はクウガに勝ちたい!」
「「「・・・・・。」」」
バレンタイン前日。
ミーティアはクウガを連れずにある三名を呼び出した。
可愛い女の子たちに囲われながらある飲食店でバイトをする優等生レオ。
思春期をぶっ壊されたけど余りに重い何やかんやがあってリア充になった一般人ハイド。
あまりに非人道的な産まれながらも隣の一般人とリア充になったエイト。
食堂で机を叩きながら言うミーティアに、三名とも白い目で見つめた。
早く帰りたい。
「僕は!!」
「わかった落ち着け。いまめちゃくちゃうるさいからな。」
反応が無かった為か更にボリュームを上げて繰り返して言おうとしたミーティアをハイドが止めた。
なんでこう、クウガとの話になると突然おバカさんになるのだろうか。
「勝ちたい、て。クウガとミーティアは恋人なんだよね?勝ち負けってあるの?」
エイトは純粋に疑問に思い、首を傾げながら聞いた。
そりゃ勝ちたいって何にだよ、と思うのは当たり前だろう。
「大体何をアプローチしても!倍返しされてこっちが恥ずかしくなるんだよ!」
「???」
「あーつまり、ミーティアがクウガを照れさせたくて色々言ってるのにカウンターでミーティアの方が照れちまうってわけだよな?」
「そう!!」
いや、"そう"じゃないが。
レイとハイドは内心で突っ込んだ。
それを堂々と認めてるのは恥ずかしくないのか。
一方でエイトは横でなるほどという顔をしている。
「お互い恥ずかしくなって黙り込むまではいったけど、それ以上行かないんだよ!キスとか!」
「「あ、したんだ。」」
夏の滄劉で海水浴にいった時のファーストキス。
秘密のつもりは無かったが、アレは誰にも話してないことなのでたったいま明かされたことになる。
「今はそういう話じゃなくて!」
「「あ、ハイ。」」
「クウガは優しいからさ、こう悪い女とかに騙されたりしないかなぁって不安でさ・・・」
男性二名はそうかぁ?と内心で思った。
あの幼なじみガチ勢が?ないない。
「逆に知らないところで誰かを天然で口説き落としてたりッッ」
「「それはありそう」」
「あるんだ!?」
唐突な男性二名の工程にエイトはびっくりした。
とにかく自然に悪意なく心を掴みかねないやつなのは最早周知の事実となりつつある。
「なので僕がクウガの心を完全に掴めば問題ないってことなんだよ!」
いやもうガッツリ掴んでると思います。
もうちょい愛されてる自覚を持とう、ミーティアさん。
そればかりは三人ともそう思ったが言わなかった。
何となく面倒くさくなりそうだから。
「明日のバレンタインが勝負・・・!何か意見が欲しいんだよ!」
来たよ、と男性二名が心底うんざりした顔をする。
しかし暴走したミーティアは止まらない。
会議は当然難航を極めたが・・・
「もっとくっついたら照れるかも?」
「それだー!」
いや、それでいいんかい。
エイトの提案がまさかの採用となった。
バレンタインでのクウガとのデート後・・・。
「うぅ、無理ぃ・・・ダメだよ、反則だよぅ。おもいっきり腰ぬけたぁ。
あのバカ!バカクウガ!おまえちょっとは加減しろッ!僕のハートを爆発させるつもりかコラー!」
またしても先日の三名が呼び出され、開幕早々ミーティアは逆ギレした。
何となくそうなるだろう、と思っていたレオとハイドは冷ややかだった。
「いや、不甲斐ないわけじゃないけど、うん保ったほうなのかな。」
「まぁ純情だもんな、こいつもあいつも。夢心地になるのも、さもあらん、てやつだ。」
冷ややかな反応にやはりというか、ミーティアは顔を上げて叫ぶ。
「にゃ、にゃにおう!そんなことない!絶対ちがーう!
僕が本気になればなあ!クウガなんてこう、ちょちょいのちょいでメロメロだぞ!ホントだぞ!
今回は不意打ちくらっただけなんだからな!
次は僕が照れさせてやるって、覚えてろこんちくしょー!」
もうとっくにあの幼なじみガチ勢はメロメロだろうけどなぁ、と。
クスクス笑うエイトを除いた二名はため息をつくばかりだった。
─────クウガの部屋。
俺はミーティアから貰ったチョコを食べながら、今日のデートに思い耽っていた。
やたら猫のように甘えて来ているようで、やはり恥ずかしげにしているミーティアの愛らしさといったら。
それで最後に上目遣いで手作りチョコを渡してきたのだから、そりゃ抱きしめて色々言った。
ミーティアが愛おしいのが全部悪い。
大好きな女の子にここまでされたら俺に限らず男はこうするのは仕方ないんじゃないか。わかって欲しい。
結局顔真っ赤で何も言えなくなったミーティアは顔を埋めるばかり。
なんだあれ、天使か。いや
しかもあれだろ?あんな子が俺を大切に想ってくれて、これからも一緒だなんて、ああ本当に─────
「幸せだなぁ。」
短く簡素ながらも、万感の想いを込めた一言を口にしながら、またチョコを齧った。
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