ショートシナリオ:執事とは
「ブランよ、あたしは不満がある。」
「なに。」
二人きりの時間、スノウは唐突に切り出した。
「ブランは執事だ。 」
「恋人じゃないの?」
「うるさいっ、それもそうだけど今は置いといて」
「ダメだよ」
「わかった!!ブランは執事で恋人です!!!」
話を切り出したが進まない。
妙というか当然というか、ブランの拘りに出鼻をくじかれてしまう。
根がなんやかんなで乙女で、一度拗らせた人間なので、そういうシチュに弱い。
意識すると顔が赤くなる。
しかもそこからブランは天然で逃がしてくれないものだから、尚更だ。
それはさておき。
「ブランはよくあたしの言うことを聞く。」
「うん。」
「前なんか服脱げつったら全部脱いだ。」
「うん。」
「でも犬のように扱うと噛むよな!」
「当たり前じゃん」
「なんで!!」
不満はそこだった。
いや誰が見てもスノウが悪いのだが、からかいたいものはからかいたいのだ。
だって見た目も中身も年齢に関わらず子供だから。
「ブランは執事でもあるから言うこと聞くよね。」
「うん。」
「だったら噛まないでよ!」
「いやだよ。」
「なんで!!!」
まるで譲る気がない。
「おおらかに受け流してくれたっていいじゃん!」
「親しき仲にも礼儀ありって言うから、いやだよ。」
「いい教育してんなぁ、ちくしょう!」
アルは予めスノウの言葉にメタを取れる返しをブランに叩き込んでいたのだ。
スノウの脳裏に、イイ笑顔でサムズアップをするアルの顔がちらりと浮かぶ。
腹立つくらい、イイ笑顔だった。
「それにさ───」
「うん?」
脳裏のアルを取り払うように、ブランは言葉を続ける。
「好きな人にくらい、人として見て欲しいから。」
その言葉にまた、内から乙女の情動が溢れそうになり────
「そういう所だよなぁ。」
なんとか収めて、仕方ないなという顔で─────
「そういうところなんだよなあ!よーしよしヨシヨシよしよしよし─────あんぎゃあああああああ!?」
やっぱり可愛がりたい衝動で犬扱いをし、当たり前のように噛まれたのでした。
でめたしでめたし。
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