第26話 プレゼント


「助かるよ。ありがとうな」


「ヨウジさまにそう言って頂けるとは光栄だよ。それで……ものは相談なんだが、この前の聖遺物を追加で頂くことはできないだろうか?」


「……というと?」


「ウグッ……。話せば長くなるのだが、ウチの村は未曾有の危機に反しているんだ。それというのも月に1度、ウチの村にやってくる商人から購入する魔石代が高騰していてね。野郎……! 俺たちが他に購入手段がないと分かった途端、値段を吊り上げてきやがったんだ……!」



 そういう事情があったのか。

 俺もよく知らないんだけど、この世界の魔石は人々の生活に欠かせない必需品になっているらしい。


 いきなり値段を釣り上げられたら生活が苦しくなるのも当然だろう。



「しかし、聞いたところによると聖遺物っていうのは代用品になるらしいんだよ! つまり……ヨウジさまの協力があればバカ高い魔石を買う必要がなくなるんだ!」



 大まかにだが、話が飲み込めてきた。

 要約すると、村の窮地を救うには聖遺物の力が必要というわけか。



「獣人よッ! その方を誰と心得ますか! 厚かましいにも程がありますよ!?」


「……リア。抑えて抑えて」



 アダイの発言にブチキレそうになっていたリアを間一髪のところで制止する。

 こういうことになるとリアは、感情の制御が利かなくなるのが怖い。



「なあ、リア。実を言うと前にも思ったんだけど、アダイに聖遺物を渡して大丈夫なのか? ほら。前に俺たちの情報が漏れるんじゃないかって懸念していただろ?」


「それについては問題ありません。アダイの住んでいる村の情報統制作業が既に完了しています。必要とあれば好きなだけ聖遺物を与えて下さって結構です」



 流石はリア! 

 いつものことながら仕事が早い。

 詳しいことは分からないけどリアが大丈夫というのなら大丈夫だろう。



「よし。それじゃあ今回も受け取ってくれよ」


「これは……! 相変わらずにスゲー魔力だぜ! 触れているだけで魔力がギッシリ詰まっているのが分かる!」



 俺から髪の毛を受け取ったアダイは何時にも増して感激しているようであった。



「また髪の毛が必要になったら言ってくれよ。食料との交換なら何時でも受け付けているからさ」


「……本当か!? そ、そいつは助かる!」



 何と言ってもこちらが差し出すのは原価ゼロ円の品である。

 髪の毛1本で必要な物資が手に入るなら安い買い物と言えるだろう。



「グッ。主さまの髪の毛……羨ましすぎます! 私でも頂いたことがないのに……!」



 俺たちのやり取りを見ていたリアは、どういうわけか悔しそうな表情を浮かべるのであった。

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