第24話 スライム分裂

「……もっと深くは掘れないのかな? 流石にこれだと殺傷能力が低すぎる」


「申し訳ございません。先程から試しているのですが……どうやらここから先の地盤が恐ろしく堅いようです」


「そうなのか?」


「……妙ですね。たしかに私は土属性の魔法が不得意ではありますけど、こんなことは初めてです」



 どんだけ地盤が固いんだろう。

 聖遺物の力でパワーアップしたリアの魔法が通じないとは相当だな。


 しかし、困ったことになった。

 この程度の落とし穴ではアジトの防衛能力が上がるとは思えない。



「提案なのですが、落とし穴の中に毒物を仕込んむのはどうでしょうか? これならば規模は小さくても殺傷能力は十分です」


「……う~ん。悪いんだけど、やっぱり落とし穴は止めにしよう。寝惚けてハマってしまいそうで怖いからな」


「そうですか……」



 だからその……世界が終わったかのような絶望顔は止めろって!


 見ているだけで心が痛くなるんだよ!


 俺の一挙一動で感情をコロコロと変えてくれるリアは、可愛らしくもあるわけだが。



「キュー!」


「ん? ライムも何か手伝いたいのか?」



 スライムの言葉は分からないが、何を言おうとしているかは仕草で察することができる。

 どうやらライムにも何か考えがあるみたいだった。



「キュー! キュー!」



 そこでライムは自らの腕の部分だけスライムの体に戻していく。



「おー」



 美少女の体からスライムモードに戻れることは知っていたけど、部分的な変形もできるんだな。


 なかなか器用なやつである。


 ライムはそのまま「ふー」と息を吐き、自分の体の一部を地面に零していく。

 異変が起きたのは、その直後であった。

な、なんだこれは……!?

 ライムの体液は、地面の上でウネウネと動きながらも徐々に体を大きくしていく。



「これは……スライムの細胞分裂でしょうか……!? 私も実際に見るのは初めてです」



 それから数分後。

 ライムの腕だったものは、新しいスライムとして命を宿すことになる。



「「「「キュー! キュー!」」」」



 最終的に表れたのは合計4体のスライムであった。



「なるほど。こいつらを使って防衛力を強化しようってことか?」


「キュー!」



 どうやら俺の推理は当たっていたらしい。 

 これは助かるな。

 たしかに仲間となるスライムが増えれば、それだけアジトの防衛を強化できるというものだろう。 



「しかし、どうしていきなり分裂できるようになったんだろう」


「僭越ながらも回答します。スライムというモンスターは体内の魔力が一定値まで貯まると、分裂をして繁殖を行うことが可能になると聞いたことがあります。主さま聖遺物を与えるたことによって条件を満たしたのでしょう」


「ふむふむ。つまりこいつらは、俺とライムの子供っていうわけか……」



 まさか童貞のまま子供が出来るとは思わなかった。

 人間パワー恐るべしである。


「子供……! 私より先にライムが主さまと子供を……!?」


 俺の言葉を受けたリアは、どういうわけか両膝を地面につけてショックを受けているようであった。

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