第21話 男の事情
「この男は処遇はどのようにしましょうか」
「手荒な真似はしたくない。まずは起きるのを待って色々と事情を聞いてみることにしようか」
どうやら俺のタックルはよほど打ちどころが悪かったらしい。
放置しておくと大惨事になりそうだったので、縄で縛った後はリアの回復魔法により応急処置を施してもらうことにした。
ちなみに目を覚まして暴れられても困るのでアジトの中にあった縄を使って侵入者の体は縛っている。
「承知いたしました。全ては主さまの意のままに」
そもそも男はどうして俺の家に侵入してきたのだろうか?
なんとなく金目当てっぽい言動だったけど、それにしたってもう少し上手いやり方があったろうに。
「目が覚めたか」
「……そうか。オレも焼きが回ったっていうことか。まさかこんなモヤシに負ける日が来るとは思わなかったぜ」
自らの敗北を悟った男は、自虐的な笑みを零す。
「お前の目的はなんだ? どうしてこんなことをした?」
「……ハンッ。薬を買うためにオレにはカネが必要だったのさ」
「薬?」
もしかしてこの男……薬物依存症なのか?
いや。
それにしては冷静な気がするし……根が悪い人には見えないんだよな。
「妹が病気を患っていてね。毎月、薬を与えないと生命を維持することが出来ねえのさ。けど生憎とウチの村は貧乏でね。このままだと明日にはもうオレの妹の命が……」
「あー」
となると強盗紛いの行為は全て妹のためだったというわけか。
う~ん。
決して褒められたことではないんだろうけど、妹のためだったと考えると途端に許してやりたくなってきたな。
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