第20話 異世界デビュー戦



「ハハハッ! いつまで逃げられるかな?」


「あわわわ……」


 

 何か……何か反撃の手段はないのか!?


 魔法で攻撃することも考えたが、今の俺が魔法を打てば家ごと破壊しかねない。


 あれ。

 もしかして俺……詰んでるんじゃね?



「主さま! 頑張って下さい!」



 声のした方を見ると、不安気な表情に駆られたリアがいた。



「ほう。エルフ族とは珍しい……。しかも、これほどの上玉は見たことがねえぜ!」



 リアの姿を見た男は、下卑た笑みを浮かべる。



「奴隷商館で売り払えば大金が手に入るか……? いや、これほどの美しさだ。きっと貴族と直接取引をした方が……」



 この男は何を自分勝手なことを言っているんだ?

 リアを奴隷になんて……そんなことは断じて許すわけにはいかない。


 頭の中でプツンと何かが弾けるような音を聞いたような気がした。



「くらええええ!」



 刀が怖いなら目を瞑ればいい!

 そう考えた俺は、両目を閉じて男に向かってタックルした。



「……ゴバァッ!」



 おかしいな。

 手応えとしては服の先にカスっただけだったのだが、それでも威力は十分なものだったらしい。


 目を開けると、そこには壁に激突して吐血をした男の姿があった。



「主さまっ!」


 

 勝負に決着がついたことを悟ったリアは俺の体に飛びついた。



「……主さま。この度は……私のことをお守り頂きありがとうございます」



 あまりに強く抱き付いているので、リアの大きな胸が俺の腹の上のあたりのところでむにゅりと形を変えていた。


 ……この感触を味わえるだけでも、進んで戦闘に参加した甲斐があったというものだろう。


 こうして俺の異世界デビュー戦は、辛くも勝利という結果で幕を下ろすのであった。

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