第17話 青髪の少女



 それにしても昨日は……凄まじい経験をしてしまったな。

 いくらパワーアップのためとは言っても流石に調子に乗り過ぎた。



 リアとのキスは10分にも及ぶ長丁場の後に幕を下ろすことになる。


 これは後で分かった話になるが……人族の体液は他種族に対する強力な催淫作用を含んでいるらしい。

 まさか強化中にリアの体力が先に底を尽きて気絶してしまうとは思わなかった。


 この力があれば元の世界でも、風俗嬢の男バージョンの仕事(名前は知らない)で食べていける気がする。



「……さて。水でも飲みに出かけるかな」



 このところ泉に出かけるまでのボディーガードは、すっかりライムの役割になっている。


 リアと一緒に行くこともあるが、忙しい時にあまり迷惑をかけたくはないからな。



「ライム! いるかー?」



 洞窟の中にいるであろうライムに声をかける。

 リアが寝ている時はライムが代わりに洞窟の入口を見張ることになっていた。



「キュー! キュー!」


「なっ……!」



 入口の方から歩いてきた生物を見た俺は目を疑った。


 これは一体……どういうことだ?

 そこにいたのは、綺麗な青色の髪を持った全裸の幼女であった。


 

「もしかして……お前がライムなのか?」


「キュー!」



 青髪の幼女はコクリとうなずく。

 

 驚いた。

 たしかに泣き声はスライム形態のライムと同じものだ。



「キュー!」


「……ちょっ!?」



 何を思ったのかライムは全裸のまま俺に抱きつき――。

 そのまま胸の辺りに頬ずりをしてきた。



「そうか。やっぱりお前はライムだったのか!」



 こういう仕草をするのは、甘えているときのライムの癖だった。


 しかし、どうしたものか。


 これまで俺がライムと気軽に散歩に行けたのは、彼女がスライムの姿をしていたからであって……。


 人間の姿……まして幼女になったライムと同じように接するのは無理がある。



「主さま? 一体何をしているのですか?」



 声のした方に目をやると、そこにいたのはリアであった。

 ぷくりと頬を膨らませたリアは、かつてないほど不機嫌な表情をしていた。



「……あっ」



 冷静になって周囲を見渡した俺は、そこで全てを察することになる。


 終わったー。

 俺の平穏な生活に終了のホイッスルが響き渡りましたー。


 寝間着姿の俺&全裸の幼女。

 そりゃ、色々と勘違いする要素は盛りだくさんだよな。

 自ら置かれた状況に気付いた俺は、必死のタイムアウトを取るのだった。

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