第6話 陸上部のウブなベータと早速エッチな展開になったのだが、それは僕の話ではないので、王子様系生徒会長で癒される

今まで僕は、アルファもオメガもない世界で、

自分もベータではないかと思うような毎日を送っていて、

起承転結もなく、

どちらかというと、スローライフ小説の中だるみ部分を

延々と繰り返すような日々だったわけなんだが、




岡田の両親、アルファだったのか!


その上での、岡田のベータ!!



全然知らなかった。

岡田がそういう家庭環境だったなんて。




あいつも、ずっと隠してたんだな。




今から思うと、

岡田は連鎖ヒートのような状態だったのかもしれない。


みんな抑制剤によってヒートに当てられた経験のない繊細な高校生だ。

剥き出しのヒート発現後(緊急鎮静剤は打ったけど)のオメガとの対峙は、

クラスのみんなに、何かしらの影響を与えたのではないだろう。


転校生を囲んでいた時の、

あの教室の異様な熱狂も、

ヒートのせいだったのではないか。




岡田という人間は、

そもそも素朴で、

いつもグループの端っこで、

はにかみながら話を聞いているタイプだ。


背は高くて、ほどよい筋肉がついていて、

いわゆるソフトマッチョ系。


惚れ込むやつがいなくとも、

その代わり、

岡田を嫌いなやつもいないという、

静かで朗らかな性格をしている。



だから決して、

鼻の代わりにチ○コが顔についているような、

性欲の塊系男子ではない。



そんな岡田が、鼻をフンフンするほど、

オメガの柳に執着を示したのは、

やはりヒートが影響しているとしか思えない。







そもそも現代では、

将来の見通しがつくまで

アルファもアルファであることを隠す傾向がある。



もちろん、公表して芸能活動に勤しむ人もいるし、

家柄が良ければ、権力のバックアップもあるので、

遠慮なくアルファと名乗る人もいる。



いいよな、権力。

権力の大きさによっては、どんな犯罪も握り潰せる。

濫用したい!



よって、オメガと比べると、

圧倒的にアルファの公表比率の方が高いが、


一方で、アルファの子を持つ親の中には、

アルファの子どもが、アルファであるがために、

周囲から「特別視」され、本来的な性格が形成されないことを恐れたり、

嫉妬の的となり、疎外されることを恐れる人もいる。


子どもの方も、過度な期待により、幼少期に多大なストレスを感じ、心身の発達に支障をきたす場合が、ごく少数ながらあるという研究結果がある。


結局のところ、マジョリティはベータであり、

アルファはオメガ同様にマイノリティなのだ。



同調圧力の強いこの国では、

波風立てずに成長し、

社会的経済的に需要が発生するまでは、

静かに爪を研ぐことが優先される。




こういう複雑な状況なので、現代では、

性別属性検査は各自、病院で行う。


検査は第二次性徴期が起きる前、10歳から16歳の間に受ける。

以前は一律に13歳だったが、栄養状態の改善などで早熟な子どもが増えたため、

身長や体重、脂肪率や骨格筋率の増加を見て、随時検査を受けることに改定された。

ヒートが起きることによって、検査前に分かることもある。


研究所から案内が来るので、

希望の病院に行き、検査を受ける。

検査日は病欠として学校に連絡し、

周囲に検査を受けることは伏せておくのが通例だ。


理由は、

自身の性別属性の結果にショックを受け、

しばらく寝込む人々がいるからだ。


たとえば、

検査を受ける日を周りに言い、

検査日以降に休みが続くとする。





それは、自分がオメガだと告白していることと同義なのだ。




悲しいかな、アルファやベータが気落ちして休むという話はあまり聞かない

(自分がアルファだと信じて疑わなかった人物が、

自身はベータと分かり、ショックを受けるということはあるらしい)。


オメガであること、

オメガであることがバレることを恐れて、


人々は用心するのだ。




昔は、学校の保健室に生徒を一同に集め、

一気に検査するという時代もあった。


しかも、性別属性検査の結果は、


その場で!紙媒体で!手渡し!




なんたる無防備!!


自分の性別属性を証明する物的証拠を持たせて、野に放つ!!


鬼畜の所業!!







これはオメガを炙り出して、

即日アンアンハァハァやれということではないだろうか?!


なんなら、アルファとオメガの運命の番探しやれということでは?!


パコパコお見合いデーでは?!?!







うらやまけしかん!!!!!!!







いや、冗談抜きで、

当時の検査日は荒れたようで、

大きな社会問題となったらしい。


最終的には、

今のような個別検査、秘密主義に移行し、

学校の教師ですら性別属性は把握していない

(政府直轄の研究機関が情報の独占管理をしている)。


よって今や、性別属性を訊くことはハラスメントだ。


「君って今日、生理?」

と訊くくらいのヤバさだ。


場合によっては、

「今日は排卵日?中出○したら孕む日?」

と訊くくらいヤバい。



カテゴリハラスメントと呼ばれる

(なんでもハラスメント、ハラスメントの世の中でございます)。



おかげさまで、僕は柳に出会うまで、


オメガにもアルファにも会ったことがなかった。


訊くことすらなかった。






ほんとは興味津々だが。






だから、岡田のことは聞かなかったことにする

(そもそも出歯亀で知ったことだし)。


柳は知らん!

あいつは勝手にカミングアウトするし!

岡田に性別属性きくし!








あの日、少なくとも5ラウンドはしたし!!







6時にそっと教室に寄ってみたら、


もうすでにおっ始めてたからな!!


気が早い!気が早い上に、話が早い!!



しかも、意外にイチャラブ心通わせセ○クスだった…!!






体育会系ノ体力ト、陸上部ノ持久力ニ期待シチャオ





柳の言葉が頭の中で響く。


体力のある体育会系ベータ、持久力系スポーツマンベータは盲点だった…!!


ベータを育ててパートナーにするという手もあったのか!という新境地。


水泳部とか、マラソン選手とか、




トライアスロン選手なんて最強じゃないだろうか?!




アルファや運命の番の存在で、

視野が狭くなっていた自分が恥ずかしい!


こんなにもエロ展開を望んでいるにも関わらず、

アンアンハァハァしたいにも関わらず、


僕は結局、







覗きをしただけじゃないかーーーーーーーー!








あいつら、僕が帰った後もまだ続けていたとしたら、

最終的に何回やったんだ。


帰ったのは5回目のフィニッシュの時だったけど、

まだまだ出来そうな雰囲気だったぞ。


ただでさえ、性欲と体力に溢れる男子高校生。

かつ、体育会系長距離陸上選手。





ポテンシャルが凄い。




5回。


少なくとも5回。


恐らくはそれ以上。








羨ましくて血を吐きそうだ。







僕も柳くらいの行動力と男を見る目があれば!

一歩踏み出せない自分が憎い!!








悶々と思いを巡らせ、

寝不足で迎えた翌朝。


校門で挨拶運動をしている生徒会。


朝早くから集まって、声出しとは体育会系だな。




「おはようございまーーーす!!」




一際大きな声が響く。


声の主は、

2年連続「実はアルファなんじゃないの?!」ランキング1位、今年度も1位最優力者の




生徒会長 馥井ふくい 貴史たかし




スラッとした長身。

端正な顔立ち。

爽やかな笑顔。

王子様タイプ。

女子からの黄色い声に、貼り付けたような笑顔で応える腹黒王子。






抱いてくれ!!

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