第5話:寄生
俺は親切なロイドに全てを説明してもらうことにした。
ここでロイドに説明してもらわなければ、受付嬢のマリナが説明しようとするだろうが、それだけは絶対嫌だ。
いくら胸が小さくても、女は女で、独特の嫌な臭いをプンプンさせている。
そんなに臭いをかがされるのは絶対に嫌だ!
それくらいなら、性格の好いロイドに酒を奢る方がいい。
「ああ、すまないが頼むよ、ロイド。
そのお礼と言っては何だが、後で酒場一番の酒を一瓶驕るよ」
破顔一笑というのは、この時のロイドの笑顔に相応しい表現だろう。
酒を奢ってもらえるのが嬉しいのか、自分の親切が正しく評価されたのが嬉しいのか、俺には判断できないが、この笑顔が見られるのなら酒など安い物だ。
何かに命懸けで打ち込んでいる男の笑顔は、本当に魅力的だ。
側で成り行きを見ていた冒険者の中には「ずるいぞ、ロイド」と言う奴もいるが、俺ともめて喧嘩になる事も畏れず、マナーを守れと言ったのはロイドだ。
「メイガならそれほど難しい事じゃない。
ダンジョンに入る時にギルドに知らせて、今までは無視して駆け抜けていた浅層の魔獣を、剣の届く範囲だけ斃してくれればいいのさ。
一階層や二階層なら、孤児や浮浪者でも集団なら斬り捨てした魔獣を回収できる。
二階層から十階層くらいまでなら、新人やロートルでも安全に回収できる。
孤児や浮浪者はその肉を食べて生きることができる。
素材売った金は、メイガからすればはした金だが、孤児には冒険者になるための資金になるし、浮浪者には薬代の足しになる。
新人やロートルも同じだ。
まあ、メイガには素材販売代金の半分を請求する権利があるが、そんなはした金はいらないのだろう?」
そうだな、浅層階の魔獣素材も代金も不要だ。
今まで自由にダンジョンに入っていたのを、申告するだけなら何の問題もない。
駆け抜けるのに邪魔な魔獣を殺すのも、今まで通りだから問題はない。
なんなら小石を持って入って、指弾で少し離れた魔獣を殺すくらいはしてやってもいいが、それでは受付嬢の願いとは少々違うな。
「その程度の事でマナーを果たせるのなら何の問題もない。
だがそれでは、受付嬢が言っていた、深階層の素材を回収してくれという条件を満たさないが、それは構わないのか?」
ロイドが一瞬困ったような顔をしたが、何かあるのだろうか?
この件では冒険者ギルドと冒険者で利害が対立しているのだろうか?
俺としては、臭い受付嬢よりも魅力的なロイドの味方をしたいのだがな。
「ロイドさん、あなた方には悪いですが、深層素材の薬を待ち望んでいる病人がおられるのを忘れないでくださいね!」
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