第3話:自由

 俺は一人の男として、自由を満喫していた。

 レントン王国の貴族に生まれた以上、王太子の婚約者に選ばれた以上、他の男に色目を使う事も、他の男の誘いに乗る事も許されなかった。

 だが、婚約を破棄され、コロンビア侯爵家から追放され、レントン王国からさえ追放された以上、何モノにも縛られる必要はない!


「次の方、どうぞ」


 冒険者ギルドの受付嬢の声に一瞬身体を固くしてしまった。

 情けない話だが、未だに女に慣れることができないでいる。

 生れてからレントン王国を出るまで、一度も女性というモノを見たことがなかったから、どうしても未知のモノに対する警戒をしてしまう。

 見た目はそれほど男と違う所はないが、身体の作りが違う事は知識と知って行っているし、注意深く見れば骨格で違いが分かる。

 まあ、それ以前に女の中には胸が異様に膨らんでいる者がいる。


「メイガ、どうぞ、貴男の番ですよ」


 冒険者ギルドの受付嬢、マリナが急かすので、意を決して受付に行く。

 大丈夫だ、できるだけ違和感を少なくするために、受付嬢の中で一番胸の小さな女をを選んだのだ、それに、襲ってきたら斬り殺せばすむ。

 俺は心の中で何度も自分に言い聞かせて受付カウンターに近づく。

 最短時間で終わらせればいい、ダンジョンで狩ってきた魔晶石と素材を渡し、金をもらえばそれで終わりだ。

 他の冒険者のように長々と話す必要などない!


「まあ、凄い品質の魔晶石がこんなにたくさん!

 素材も超一級品ばかりですね、でも、他にはありませんか?

 何時もお願いしている事ですが、メイガさんがダンジョンに放置されている素材も、本来なら一流の冒険者が命懸けで持って帰るものなのですよ。

 持って帰って来ていただければ、全部高価に買い取らせていただきます。

 相場に何割か上乗せして買い取らせていただきますから、持って帰って来てくださいと、何度もお願いしているではありませんか!」


 直ぐに受付から離れる心算だったのに、ひと呼吸もはさまずに連続して話しかけられ、一向に買取を始めてくれる様子もない。

 俺からすれば役立たずの屑魔晶石、非常時に持っておきたいと思う基準以下の魔晶石を、眼の色を変えて欲しがる。

 素材にしても、自分で加工してみたいと思う物は売らずにとってある。

 自分が狩ったと言って、冒険者ギルドに持ち込んでも恥ずかしくない物ではあるが、大したのもではない。


「知った事ではない、屑素材を取るために時間などかけられるか。

 俺にはやりたい事があって、狩りはその為の手段でしかない。

 目的のための手段に時間をかけろというのなら、他のダンジョンに行くまでだ!」


 しまった、ちょっと言い過ぎてしまった!

 女との会話を早く終わらせたくて、周囲の冒険者への配慮を忘れてしまった。

 彼らにもプライドがあるから、俺の言葉は聞き逃せないだろう。

 さて、どうするべきか、俺にもプライドがあるから、謝る気はない。

 ここは一戦して力で分からせるしかないか?

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