第2話:愚考
「ふん、お前の心配するような事ではないけど、教えてやるわ。
王家には莫大な魔力を蓄えた秘石があるのよ。
それをちょっと使えば、王家に相応しい子供を作るのは簡単よ」
会場中の貴族達が驚愕の視線を強欲な王太子とジャンに向けています。
王家の秘石を私事に使う、これほど愚かな事はありません。
男同士が子供を作る、自然に反した大事です。
そんな大それた事を成し遂げるには、大掛かりで特別な魔法陣と、莫大な魔力が必要とされます。
ましてその特別な魔法陣を使って、魔力を持った子供を作るとなれば、想像を絶する魔力が必要です。
この国に住む者達は、男同士で子供を作るために、生まれた時から魔力を高める努力を積み重ね、貯められるだけの魔力を魔晶石に蓄えているのです。
努力して魔力を高めて自分の子種に刻み込んだ才能と、時に失神するほど絞り出して蓄えた魔力を使い、自分以上の子供を残そうとするのです。
だからこそ、上手く配分しなければ、残りかすのような次男三男が生まれてしまう事になるのです。
我が家の両親は、最初の子である私に魔力を与え過ぎました。
そういう意味ではジャンは犠牲者かもしれませんが、その恨みは両親に向けるべきモノで、私に向けるべきではありません。
それくらいの分別ができないから、魔力以外の力も技も手に入れられないのです。
もっと己を磨けば、別の生き方もできたでしょう。
まあ、もういいです、これからは二人とも赤の他人です
ありがたい、これで配偶者として優しい態度も言葉遣いも使わなくてすむ!
「ジャンには聞いていない、お前は黙っていろ。
答えろ王太子ゲセルト、建国王陛下がこの国の非常時に使えと残された秘石を、男爵程度の魔力しかない配偶者との子供を残すために使うというのだな」
会場中の貴族が息を飲んで驚いています。
侯爵家の資格がない魔力と聞いていても、辺境伯、最悪でも伯爵程度の魔力はあると思っていたのでしょう。
それが、事もあろうに男爵程度の魔力しかないとあっては、秘石から奪われる魔力の量は想像を絶することになります。
「何が私事だというのだ、メイガ?
王家に優秀な後継者を作るという事は、国の重大事ではないか。
その為に秘石を使うというのは、建国王陛下のお言葉にかなっている。
私に嫌われフラれたからといって難癖をつけるとは、見苦しいにもほどがある。
近衛兵、とっととこの尻軽男を放り出せ!」
ここまでゲセルト言わせれば、元婚約者、元未来の王配の責任は果たした。
この後どう判断して行動するかは、貴族共が考えればいい事だ。
重責から解放されたのだから、これからは好きにやらせてもらう!
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