大学生と買い物

「で、なんで二人ともついてくるんだ?」


 まだまだ元気な太陽の熱を感じながら汗を流してスーパーへの見慣れた道を歩く三人。 一人で行くと言ったのに二人とも聞かずついて来ている。


「だってつっくんと買い物って久しぶりなんだもんー」

「未来ちゃんは昨日散々コミケで一緒に回ったンじゃないのか?」

「普通の買い物は何週間かぶりですー」


 ヤンキーモードのまま日向は不服そうな顔を浮かべた。 それにしても未来とまともな買い物をしに行ったのってそんな前なんだっけか。


 和気あいあいと話に花を咲かせながら道を歩いているとスーパーにたどり着いた。 入り口に近付くと何やら見慣れた顔がいる。


「あれ? 紗月にい?」


 入り口にある安売りのワゴンの前に立っていたのは蘭ちゃんだった。 蘭ちゃんは家出騒動の時にメナージュ出会っていないから結構久しぶりだ。


「蘭ちゃんも買い物?」

「そうなんですよ、お姉ちゃんが自堕落な生活を送っていて何かとパシられるんです」


 俺と未来は顔を見合わせて頭に疑問を浮かべていた。 前にキャミソールのままだったことは覚えているが蘭ちゃんがそこまで言うくらいだ。 俺たちの知ってる杏樹からは想像ができない。


 まあ杏樹のことは置いておいて、前にもこのスーパーで蘭ちゃんにあったよな。 何やらデジャヴ感が否めないが気のせいだろう。


「紗月にい! 今日カレーなんだけどどうかな? うちに遊びに来ない?」


 うん、間違いなくデジャヴだ。 カレーは嬉しいんだけどこっちには日向もいるし、正直まだ昨日の疲れが抜けきっていない。


「ごめんね蘭ちゃん。 今日はお客さんもまた今度お願いするね」

「そうですか…… ではまた今度、約束だよ!」


 少しがっかりしたと思うとすぐに笑顔になり蘭ちゃんは去っていった。 ここまでいい子だと未来や日向に見習ってほしいものだな。


「相変わらず可愛いな」

「「今なんて?」」


 フタリトモコワイヨ?


 多少の軽蔑の視線を浴びた後、スーパーに入る。 スーパー独特の効きすぎた冷房と野菜の青臭さが鼻につく。


「パエリアって何が必要なんだ?」


 料理はおろかその他もろもろも壊滅的な俺だ。 パエリアなんてオシャレな食べ物に何が入っているかなんて知るはずもない。


 日向はスーパー内の地図を見るなり、かごを手にすたすたと歩いて行った。


「米に海老やらの魚介類、野菜はトマトとパプリカあたりが旬だしいいな」

「日向ちゃん詳しいんだねー」

「言ったろ? 昔から色々とやってきたンだよ」


 自慢げに言うがパーカー姿でスーパーのかごを持っているとお嬢様というよりは家庭的な少女と言った感じだ。


 本人に言うと殴られそうなので俺は大人しく二人の後ろをついて行くことにした。







 

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