大学生と星空

 ちゃんと話し合う決心をした紅葉ちゃんを見届け、俺と未来、杏樹にバカップルで外灯を消した閉店後のメナージュにいた。


 舞先輩のご両親のご厚意の元、夕飯のスパゲッティを食べて高校時代の話に花を咲かせていた。


「覚えてるか? いなくなった未来を探して紗月が疲労骨折したこと」

「懐かしいわね、確か三週間入院して一か月近く松葉杖だったわよね」


 確かに懐かしいがその話を聞くと折れた左足が痛くなってくる。 あれ、右足だっけ?


 まあ、あの時は探すことにしか意識が向いてなかったし三週間入院したのは軽い過労も相まってのことだし。 とりあえず高二の頃は色々とあった一年だったよな。


「舞先輩とゴリラが付き合い始めたのも高二の時じゃなかったっけ?」

「そうだな、その件は助かったぞ紗月。 今のところは最高のキューピットだぞ」


 これもまた懐かしい。 舞先輩と雄二、両方から恋愛相談をされたんだっけか。 そしてそのあとすぐにくっついてーー


「そう言えば杏樹は浮いた話を聞いたことないな。 誰かいい人はいないのか?」

「私? いるわけないじゃない」


 真顔で即答されてしまった…… 杏樹も普通とはかけ離れた顔面偏差値の持ち主なのだから相当高望みしなければ彼氏の一人や二人はすぐにできると思うんだけどな。


 まあ、この調子だと蘭ちゃんに先を越されそうな気もするな。


「思い出話ももうそろそろにしてお開きにしましょうか」


 杏樹がそう切り出した。 時計を見るとすっかり針も上を向いており良い子は寝る時間となっていた。


 これ以上舞先輩のご両親に迷惑をかけないためにもお暇するとしようかな。


「じゃあまた、時間があったら集まろうか」

「だな! 今度は蘭ちゃんも追加でな!」

「ゆう君? さっき話したばっかりだよね?」


 これから長い話をされそうな雄二に別れを告げてメナージュの外に出る。 外は気温が下がり涼しくなっていて空には数々の星が我こそはと光っている。


 三人して見上げていると一つ、流れ星が落ちたような気がした。 とりあえず願い事でもしておこうかな。


 これからもこんな日常が続きますように。 あとなにもない平穏な毎日になりますように。


「じゃあ杏樹も気を付けて」

「私を誰だと思っているの?」

「ですよね」


 メナージュから少し歩いたところで杏樹と別れた。 一応送ろうか、と声をかけたのだが軽くあしらわれてしまった。


「空がきれいだねー」

「月もきれいだな」


 丁度今日は満月だ。 月も星に勝ち誇ったように光っている。


「え、プロポーズ?」

「その場合俺は周りの星にもプロポーズしたことになるけどいいのか?」

「だめー」


 そうだ。 このまったりとした、しかし超特急のように進む毎日が続きますように。


 あー、疲れた。


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