大学生とお姉ちゃん
「お邪魔しま、ってお迎え一つないのかしら?」
「まあまあお姉ちゃん。 紗月にいのことだからきっと何かサプライズが」
玄関の方でドアが開いた音が鳴り俺はすぐに向かおうとする。 すると紅葉ちゃんが俺より先に玄関へ向かっていた。
「いらっしゃいませー!」
「「……え!?」」
お互いに初対面で三人とも固まってしまった。 なんで紅葉ちゃんまで固まっているのか俺には理解できないが面倒なことになりそうだなと俺はリビングへ戻ろうとする。
「ちょっと紗月? これはどういうこと?」
「紗月にいの浮気者……」
二人はありもしない勘違いをして俺のことをゴミを見るような目で見ている。 心なしか杏樹がバッグを投げようとしているように見える。
「落ち着け二人とも! 事情があるんだ! 紅葉ちゃん頼む」
俺は二人の勘違いを解くべく紅葉ちゃんに事情を説明するように頼んだ。 しかし紅葉ちゃんはいたずらな笑顔を浮かべると杏樹と蘭ちゃんの方を向き、
「私はお兄さんのために箱根からやってきました!
「「「えええええええ!?」」」
紅葉ちゃんの思わぬ発言に俺を含め三人で驚きの声を上げる。 いつから紅葉ちゃんの名字は開隆になったんだろう。
「さ、紗月!? 嘘よね!?」
「紗月にい!? その話がほんとだったら私、何するか分からないよ?」
本当なわけあるか! と言おうとしたら紅葉ちゃんに口を押えられた。 息ができない、ぐるちぃ。
「あ、紅葉ちゃん。 お義母さんから電話来てるよ」
「え…… 放っておいていいです」
未来が電話のことを話すと紅葉ちゃんは俺を解放して肩を落としながらリビングへ戻っていった。
「で、さっきの話は?」
「嘘に決まってんだろ!」
その後、二人に事情を説明して五人でリビングに集まる。 俺以外が全員女子と言うウハウハな状況だが異様に空気が重く冗談一つ言えない雰囲気だ。
「それで紅葉さんが紗月の家に住んでると」
「まあそうなります」
杏樹と蘭ちゃんはジト目で俺のことを見ている。 言葉にしなくても何もないわよね? と目が語ってるのでもちろん、と視線で返す。
「まあここ三日のことはいいわ。 その代わり今日から紅葉さんはうちで預かるわ」
「「え!?」」
俺と紅葉ちゃんは突然の発言に驚いた。
「だって紅葉ちゃんの母親だって紗月みたいな男のところに娘を置いておくのは嫌なんじゃないかしら?」
「でも私がお母さんが未来さんにひどいことをしたのが原因だし……」
「そうやって理由を人に押し付けない。 言っておくけど悪い点はあなたにもあるのよ?」
杏樹は諭すように優しく叱っている。 こういうところちゃんとお姉ちゃんしてるなと感じるポイントでもある。
「だからうちの養子になりなさい!」
んんん? 杏樹さん!?
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