大学生と女子高生

「杏樹、どういうことだ!?」

「文字通りよ。 うちのに来ないかって」


 ほぼ初対面なのにいきなりうちの養子になれだなんて杏樹は頭がおかしくなったのだろうか。 いや、杏樹のことだ何か考えがあるんだろう。


「一目見た時から可愛いな、愛でたいなって思ってたのよ」

「マジすか杏樹さん」


 考えどころか下心百パーセントでした。


「うーん、お姉さんのところに行くのもありだけど私はお兄さんと一緒にいたいなー」

「そうなのね。 紗月、悪いけど消させてもらうわね」

「え、杏樹さん? 今なんて……」


 何か不穏な言葉が聞こえたけど気のせいだと思いたい……


「なんで無言でこっちに向かってくるの!? ちょ、やめ」


 杏樹は俺と体が触れ合うくらいに近付いて耳打ちしてきた。


「紗月、彼女は相当気に病んでるみたいだから早く問題を何とかしなさい」

「おう、分かってるさ」


 実はさっきからアイコンタクトで杏樹から何かあるなと思っていたがこういうことだったのか。 伝え方はともかく、杏樹は冷静に俺を諭してくれた。


「お兄さん? どうかしたんですか?」

「え、ああ、お腹がなんか熱い気がするけど何でもないよ」

「つっくん!? 刺された人が言うセリフだよ!?」


 杏樹はフンっと身を翻しソファに戻る。 俺は…… 刺されてないよな?


「それで私と蘭は何をすればいいの?」


 彼女らを呼んだのは俺だが特に用もなく読んでしまったことを後悔する。 とりあえず何か理由をつけて誤魔化さなければ。


「えっと、蘭ちゃんと紅葉ちゃんは同い年だろ? それでこっちのことを教えてあげてほしいというか」

「そういうことだったのね。 ならいくらでも蘭を貸すわ」

「え、お姉ちゃんひどい」


 杏樹は惜しむことなく蘭ちゃんを貸してくれた。 紅葉ちゃんは本物の東京の女子高生を目の前にして緊張しているようだった。


「えっと、名前は知っている通り紅葉と申します」

「私は蘭だよー、どうぞよろしくー」


 蘭ちゃんは俺のことをチラチラと見ながら自己紹介をしている。 なんだ?


「それで今は…… 紗月にいの愛人です!」


 ナニヲイッテイルノカナ?


「つっくん!?」

「どういうことかしら?」


 全員一斉に俺のことを睨んでくる。 紅葉ちゃんに関しては驚きすぎてフリーズしてしまってる。


「あ、冗談だよ?」

「いきなり変なこと言わないでくれよ…… 危うく俺が消されるところだったじゃん……」


 蘭ちゃんが冗談だと言うと俺に向けられていた殺気はなくなりホッとする。 俺が浮気でもしようものなら次の日には失踪扱いになっていそうだな。


 ピンポーン


 こんなお昼前に一体誰だろう。 俺が玄関に向かいのぞき穴から確認すると、


「なんで来た」


 そこに立っていたのは忌々しいクソババアだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る