大学生とうどん
「重いー……」
「まあ我慢しろって、もうすぐだから」
うどん屋での修行を終え、未来は両手にビニール袋の中に入った沢山のうどんを持って旅館に帰ってきていた。 どうやら親父さんに認められたとかで随分と機嫌がよさそうだ。
それにしてもこのスーツケースにも入りきらなそうなうどんはどうするんだろう…… 持ち帰るにしても量が多いし、郵送するにしても痛まないか心配だしな。
「この量をどうやって持ち帰るんだ?」
「どうしよっか」
なんも考えてなかったのかよ。 普通もらった時点で気づくだろ……
「こうなったらしょうがない。 半分くらいもらってもいいか?」
「全然いいけど、どうするの?」
「まあ、消費してもらいにな」
*
コンコン
「はーい」
俺は隣の部屋の扉をノックする。 俺たちの部屋の隣には日向たちサザンドラが泊っていておすそ分けをしようと思ったのだが出てきたのは日向ではなく違うメンバーだった。
気まずいな……
「あの、これおすそ分けです」
「これは…… うどんですか!? 実は今日の分の夜食をどうしようか迷っていたのでありがたく食べさせていただきますね! 海竜先生!」
「あ、はい…… 良かったです」
メンバーの一人はにこやかに笑って受け取ってくれた。
まあずっと下向いてたから笑っているは分からなかったけど。 我ながらひどいコミュ障だな……
「はあ、戻るか」
「あれ? つっくん?」
部屋に戻ろうと廊下に出ると未来が扉から出てきた。
「つっくんがうどんを持って行ったのは日向ちゃんたちに渡すためだったの?」
「そうだけど、なんかダメだったか?」
「いや、そういうんじゃないんだけど…… 私だってそんなにうどんを打ったことないし味が心配で」
いや、可愛いかよ。 未来はチート人間なんだから大丈夫だろう。
「安心しろ、まずくても俺が食ってやる」
「つっくん…… なんでこんな時だけかっこいいこと言うの?」
一瞬笑いかけた未来が真顔で聞いてくる。
俺ってそんなに空気読めてないのかな。 別にもったいぶっていつも言わないとかじゃないんだけど……
「まあ許してあげる。 それより最終日なんだしお風呂行こー」
「そうだな。 先に言っておくが露天風呂は行かないからな」
「えー、楽しみにしてたのにー」
旅行に来てから露天風呂ではロクなことが起きてないからな。 それにやろうと思えば家でも二人で入れるし。
まあするわけないけど。
「そんなこと言ってないで行くぞ」
「はーい」
部屋に戻りお風呂に行く準備をしていると、
ピコン
と音が鳴った。 どうやら俺のスマホのようだ。
『紅葉:紗月さん! 先ほどぶりです!』
……え? 紅葉さんとIDなんて交換したっけ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます