大学生のかくれんぼ
「あれ、六実がいないぞ」
俺と未来はフェリーのデッキから戻り六実を探していた。 けれどいくら探しても六実は見つからなかった。
「六実ちゃんどこ行ったんだろう…… 迷ってないといいんけど……」
「流石にフェリー内で迷うことなんてないだろ。 それに降りるときにスマホに連絡入れとけばいいだろ」
「でもいないと心配だよ…… 一緒に探そ? ね?」
未来は上目遣いで俺にお願いしてくる。
可愛すぎかよ…… しょうがない、未来に免じて探すとするか。
「わかったよ。 でもフェリー内は一周したはずだぞ? それでもいないってことはどこかに隠れているか、ずっと入れ違いになってるってことだぞ?」
「そうだよねー。 六実ちゃんが行きそうなところかー」
六実ならどうするか…… 例えば俺らだけデッキに上がったのに拗ねてどこか端の方にいるとか?
*
「あ、いた。」
「つっくんの予想通りー。 六実ちゃんみーつけた!」
俺の予想通りフェリーの後方にある小さな休憩室の窓際に六実はいた。 六実はつまらなそうに窓の外を見つめながらジュースを飲んでいる。
「紗月に未来ちゃん、暇だったよ……」
「そういえばフェリーの中でもデッキに行けるチケットを買えるみたいだぞ」
「えー!? それを早く言ってよ!」
だってデッキに張り紙がしてあったんだもん。 それに船内にも張り紙はあると思うしわざわざ言いに行かなくてもいいかって思ったんだもん。
「まあ、船内からでも景色はきれいだったろ?」
「まあそうだけど……」
『まもなく港に到着いたしますのでお荷物をご確認の上、乗降口までお越しください』
アナウンスがあり窓を見てみると陸地がすぐ近くになっていて周りには誰もいない。 それにここがフェリーの後方であることを思い出した。
「まずいぞ。 迷惑をかけるわけにもいかないし急いで乗降口で行くぞ」
「あいさー!」
六実に急いで準備をさせ、俺たちは乗降口へ向かった。 幸い港に到着すると同時に乗降口に滑り込み何とか間に合ったけれど全員息が上がっていた。
「はあ、はあ、何とか間に合ったね……」
「運動不足にダッシュはさせちゃダメだろ……」
普段パソコンと机にしか向かっていないのに急にダッシュなんて無理に決まってんだろ…… もう今日の分の体力使っちゃったじゃねえか……
「紗月は運動しなさすぎなんだよー。 私を見習って少しは体動かしたらどうなの?」
「うるせえ…… 六実だって息上がってるだろ……」
続々と降りるお客さんを見送る乗組員さんが俺らを見るなり驚いた顔をしている。
まあ、当たり前か…… さて体力も使い果たしたし、これから半日なにしようかな。
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