大学生とバス停

「ほらつっくん! はやくはやくー!」

「待てって未来、俺はそんな走れるほど若くないんだぞー」

「十八歳が何言ってんのー? ほら行くよー」


 朝から色々と精神的に辛いのだが、未来と約束していたフェリー観光をさっさと終わらせてしまおうと俺たちは旅館を出た。 旅館からは直接芦ノ湖行きのバスが出ていたためそれに乗り船着き場まで行く予定になっていた。


「なんか眠そうだけど大丈夫? 昨日ずっと小説書いてたんでしょ?」

「まあな。 でも徹夜は慣れてるしさっき日に当たったから元気いっぱい、ってわけでもないけど大丈夫だ。 それにフェリーで寝る予定だしな」

「えー、もったいないなー。 せっかく天気もいいんだしデッキで景色を楽しもーよー」


 バスを待ちながらあくびをしていたら未来から心配された。 まあ、徹夜に慣れているのは本当だし自分の限界は分かっているつもりだ。

 それにしてもさっき六実はなんで俺の部屋に来たんだ? なにか未来と話していたみたいだけど俺に言えないことなのか?


「そういえばさっきは六実と何を話していたんだ? 結構長い間話ていたけど」

「え!? 別に何でもないよ! 乙女の秘密!」

「何でもないのに乙女の秘密なのか……」


 一体何なんだ? ものすごく焦っているようだけど…… まあ、そこまで言うのなら詮索はしないでいようかな。

 と、考えていると予定時刻ぴったりに芦ノ湖行きのバスがやってきた。 俺と未来は乗り込むとバス後方の二人席に並んで座った。


「窓側譲ってくれてありがとねー」

「まあ俺は寝れればそれでいいしな」

「むー、景色ー」


 どこまで俺に景色を見てほしいんだよ…… そこまで言うのならとことん付き合ってあげるから大人しくしていてくれよ。


「待ってくださいー! 私も乗りますー!」


 閉まりかけていたドアに全力ダッシュで向かってくる褐色の肌をした(自称)美少女がいた。 それを見た運転手さんは開けなければドアごと破壊されそうな少女のダッシュを見てドアを開けていた。


「おいおいまじかよ……」

「はあー、間に合ったー。 よ! 紗月に未来ちゃん!」

「なんで六実まで芦ノ湖に行くんだよ。 沖縄の友達と来たんじゃないのかよ」


 確か六実は地元の友達と三人で観光に来ていたはずだ。 なのになんで一人で俺たちと一緒に観光しようとしてるんだ?


「だって二人とも風邪ひいちゃったんだもんー。 こっちの夜の寒さを甘く見てたみたい」

「そういうことか…… じゃあさっきの部屋の話って……」

「私が未来ちゃんに頼んで同行させてもらうことになりましたー!」


 なんで朝っぱらからこんな元気な女子二人と観光しなきゃいけないんだよ…… さっき決めた決意がたやすく崩れていったぞ。

 ああ眠い……

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