大学生と温泉卵
「ふう、夏だから暑いと思っていたんだが思ったより寒いんだな……」
「ううー、臭いー」
突然ですが俺たちはどこにいるでしょう。 正解は硫黄の匂いが強くて草すら生えない箱根山の山頂でした。
麓から急斜面を走る電車に乗り、ケーブルカーで山頂までの一時間ほど、俺と未来は今まで見たことがない自然の神秘に触れ硫黄の匂いに嫌気がさしていた。
「確かに臭いが
「
そう言うと未来は階段を下りた先にある小さな建物に向かって走っていく。 俺は小走りで後を追うことにした。
俺たちが探している
「未来ー、転ぶなよー」
「あいさー! 先に二人分買ってくるねー!」
なんでこんなにも足場の悪い階段でそのスピードが出せるんだ……? と思いつつ俺も階段を下りきり建物の中に入る。 中は空調がしっかり整備されていて俺は深呼吸をして未来を探す。
人はあまりおらず未来はテーブルに腰を掛け手招きしていた。
「つっくーん、買っておいたよー」
「はやっ! そんなにすぐ買えるもんなの!?」
「だって、ほら」
未来が指さす先には山積みに積まれた真っ黒の温泉卵があった。
って、え!? 一個五十円!? いくらなんでも安すぎないか!?
「なんか安いよねー。 おかげでこんなに買っちゃった!」
未来がビニール袋から温泉卵を取り出して俺の前に積んでいく。
「こんなに買ったのか!? 二人で食べきれる量なの!?」
「んー、きっと食べれるよ!」
「まだ昼前なのに……」
机に積まれた約二十個ほどの温泉卵を見る。 うん、これを全部食べたらご当地グルメとか何も食べれなくなるな。 そう思い俺は持ち帰り用の容器を買った。
「持って帰るのー?」
「どうせ夜にお腹すいたって言うだろ?」
まあ、未来の場合はいつでもお腹が減っているんだけどな。 本当になんでそんなに食べて太らないんだろう……
「ん! 美味しいよ! つっくん!」
俺が容器を買ってきている間に未来は殻をむき三つほどほおばっていた。
「俺の分も取っておいてくれよ……」
ものすごい勢いで食べ勧めてる未来を横目にこれからの予定を考える。
食べ終わったらロープウェイで下山して芦ノ湖か。 その前にご飯を食べたいしな……
まあ行き当たりばったりでもいいか、それも旅行の楽しみ方だし。
「つっくーん。 最後の一個食べちゃうよー」
「誰があげるか。 残りの分は俺が食べるからな」
こんな短時間に未来が食べつくすくらいだからな。 相当美味しいんだろうな。
「ふう、お腹いっぱいになったしもうそろそろ行こっか」
「行くか。 この後は芦ノ湖でいいか?」
「うん! つっくんとならどこだっていいよ!」
ッ! 急にそんなこと言うなよ!
俺は未来の不意打ちをもろに受け、悶えてしまった。
「未来、もうちょっとここにいよう」
「うん! いいよ!」
気持ちを落ち着けるのにこの後二十分かかった。
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