大学生の夜

 未来はまだ熱が残っているのか窓を開けて涼んでいる。


 すずしいなあ。 ずっとこうやってしていたいなあ。 こうしてさっきのことも忘れたいなあ。


「はあ……」

「つっくんどうしたの? そんなに浮かない顔をして」

「未来は女子トイレから突然男が出てきたらどうする?」


 俺はさっきの状況を少し変えて聞いてみた。


「間違いなく通報するかな」

「理由があったとしたら?」

「理由があってもまず通報からかなー。 理由がどうあろうと女子トイレから出てきた時点で怪しすぎるでしょ」


 だよなー。 通報だけはしていないと思うけどこれから日向に会うとき気まずくなるなあ…… 早く誤解を解かなきゃ。


「なんかもう眠いやー」


 未来は時計を見ながら言う。 時刻は二十四時を回ろうとしていた。


 俺ももう眠いな。 明日は一日ゆっくり観光する予定だからもう寝るか。


「もう寝るか。 未来は明日はどこに行きたいんだ?」

「フェリーとか乗ってみたいなー。 あとロープウェイとか」

「じゃあ明日は箱根山でも行くか」


 ロープウェイで下ればちょうど芦ノ湖があったはずだ。 その順路で回っていけばいいだろう。


「じゃあつっくん、おやすみー」

「ああ、おやすみ」


 目を瞑ると一瞬にして睡魔に襲われ、俺はすぐに意識を手放した。


 *


「ふあ…… 今何時だ……?」


 ふと目が覚めてしまった。 窓の外が暗いままなのでまだ夜中のようだ。


「ん? 身動きが取れないぞ?」


 俺は体に拘束感がして体を見てみる。 すると未来が俺の体を抱き枕にするように、

ものすごい力で締め付けてくる。


「み、未来! いた、痛いってば!」

「むにゃむにゃ……」


 だめだ。 起きる気配がない…… 

 まあ未来だしいいか。 


「んー!」


 離しまいとする未来を押しのけ俺は布団から出る。 そして電気ポットに水を入れ部屋の隅にある座椅子に座った。

 時計を見ると五時になっていたため二度寝をする気も起きず小説を書き進めることにした。


 どうせ書くことになる明日の腐敗系小説でも進めておくか。 


「と言ってもな…… 題材が思いつかないし……」




「んあ、おはよーつっくん」

「ん? もう起きたのか?」


 俺は時計を見てみる。 題材を考えているうちに時刻は六時半になっていた。


「つっくんはこんな早くから何してたの?」

「未来に絞め殺されかけたから避難してただけだぞ」

「え、私? そういえば昨日つっくんが先に寝ちゃったから腕にくっついてたけど……」


 だからか…… 今日寝るときは未来が先に寝るのを待とうかな。


「つっくん! ご飯食べたらすぐに行こー!」

「そうだな。 遊べるうちに遊んでおこうか」


 俺たちはすぐに着替えて中居さんが料理を運んでくるのを待っていた。


 あ、お湯沸かしてたの忘れてた。


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