~~夏休み 旅行編~~

大学生の夏休み 初日

 日向と約束のブツを交換し、レポート提出もその場で合格をもらってめでたく二人そろって夏休みになりました。 なお日向からのフィギュアは恥ずかしいとの理由で未来さんに没収されました。

 そしてその帰り道。


「ねえフィギュア返してよー。 ねえ未来さーん」

「拗ねないの。 これは私が絶対に人の目に着かないところに置いておくからね」


 俺は道具をねだる某小学五年生のようにしてみたが駄目なようだ。 お願いだよ、みらえもんー。


「わ、私がいない時くらいは出してあげてもいいけど……」

「みらえもんありがと! じゃあ今度お願い一つ聞いてあげるよ!」

「つっくん、そのキャラはやめて…… でもお願い一つはいいなあ」


 過去に未来にお願いを一つ聞くというと大抵が旅行になるのでそれを期待して俺は言った。


「やっぱり旅行かなー。 ちょうど明日から夏休みなんだし!」

「だよな! 俺はいつでもいいぜ、って今明日からって言った……?」

「うん! 明日から! せめて二泊三日くらいがいいかなあ」


 まてまてまて。 旅行に行く分には全然いいのだが明日からとなると話が変わってくる。

 俺にはあと一週間後に締め切りのプロットとサザンドラから頼まれている同人小説がまだ残っているんだぞ!?


「なあ未来、明日からじゃなくて来週にしないか? その方が宿もちゃんと取れるしいいだろ?」

「えー、せっかく課題から解放されたのにー」


 そういわれてもな…… あ、そうだ。


「どうしてもというなら一つ提案ああるんだが」

「んー? どういうこと?」

「明日からの旅行は認める。 ただし行く場所は箱根にしてくれないか?」


 俺は旅行を楽しみつつ小説を書き上げられると思い箱根に行こうと提案した。 確か箱根はがいるはず……


 *


「来たぞ箱根ー!」


 箱根に着くや否や旅行恒例の未来さんの雄たけびが炸裂した。 周りの人には効果抜群だったようで一斉に視線が集まる。

 恥ずかしいからやめてほしいんだけどな……


「まさか昨日の今日で本当に箱根まで来れると思ってなかったよ! つっくんありがと!」

「俺より今からくる日向に感謝しろよー。 東京からの新幹線だけじゃなくて宿まで取ってくれたんだから」


 実はサザンドラのメンバーも今日から箱根で旅行すると聞いていてダメもとで日向に頼んでみたのだが……


「あ、来たみたい! おーい、ひーちゃーん!」


 タクシーから降りてきたのは旅館の浴衣姿の日向だった。 手には途中で寄ってきたのか某アニメショップの袋を持っている。

 嘘だろ、昨日から来てたのかよ……


「今日はありがとな。 それにしてもよく前日で部屋が取れたな」

「うふふ、あなたのおかげで一部屋五人で寝ることになったわ」

「あ、なんかごめん……」

 

 サザンドラのメンバーはほとんどが女子である。 男もいたけど腐敗系がメインということで長居する人がいないという。

 ちなみにそんなサークルと関わって未来は怒らないのか? と思う人がいるかもしれない。 けれど安心してくれ、彼女たちはみんな腐敗系女子だから! 一人の男子に興味はないんだよ!


「こんなところで長話もなんだしとりあえず荷物を置きに旅館まで行けば? 私が乗ってきたタクシーはそこに止めてきてるから」

「おお、ありがとな! 日向は乗っていかないのか?」

「私はいいわ。 今から聖地巡礼してくるから」


 聖地巡礼といっても腐敗系のだろ? と俺は思いながらタクシーに乗り込む。

 ホテルに着いてから気づいたのだがあの納豆女子は旅館から駅までのタクシー代を俺に押し付けてきやがった。




 二倍のタクシー代を払い俺と未来は旅館に着きチェックインし、部屋に荷物を置いてきた。 一緒の部屋だがいつものことなので特に何も思わない。 前にそのことを雄二に話したら無言で殴られたがなんでなんだろう。


 コンコン


「はーい」


 急にドアがノックされ俺は部屋の入り口に向かう。

 まだ朝だし中居さんじゃないと思うんだが……


「やっほー紗月! 来ちゃった」


 扉を開けると褐色の肌をした女子が立っていた。 俺はそいつに見覚えがある。 

 なんでかって? それはな……


「なんでここに六実むつみがいるんだよ! 確か沖縄に帰ったんじゃないのかよ!」


 こいつは俺の従妹の六実さんだ。 いや、何でここにいるの……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る