ナイトシフト 3
深夜二時。二人のシフトが終わった。
これからは朝までオーナーの妹がやって来て店を一人で切り盛りする。
二人は帰る前に従業員室でお弁当を食べていた。どうせ捨てるからと廃棄の品をオーナーの妹がくれるのだ。
廃棄と言っても賞味期限は今日なので買ったものと変わりない。食費が浮くので学生の二人からすればありがたかった。
真衣は眠そうにオムライスをもぐもぐ食べた。
「いやあ~。毎度毎度悪いよね。客来ないのに食べさせてもらって」
「やめてよ……。食べづらいじゃない……」
凛子はそう言いながらもミニそぼろ丼とサラダを食べている。
「もはやあたしらの仕事は喋ってメシ食ってるだけとも言えるよね」
「……残念ながらそうね。あとメシって言わない」
「ごはん」
「よろしい」
凛子は真衣をしつけたあと、はあとため息をついた。
「でも就活の時とかどうしよう……」
「どうって?」
真衣は呑気に炭酸ジュースをごくごく飲む。
「友達にさ。ゲストハウスでバイトしてる子がいるのよ。その子は毎日外国の人と会ったり、仲間と一緒にがんばったりしてるの」
「言ってたね」
「なのにわたし達はコンビニの夜勤で喋ってメシ食ってるだけ」
「りんちゃんも言ってるじゃん」
「就活の時、学生時代に打ち込んでたものはなんですかって聞かれたらなんて言えばいいの?」
「わら人形に五寸釘を打ち込んでましたって言えば?」
「呪い! そんな学生採用されるわけないでしょ!?」
「ああ。りんちゃんは呪われる方か」
「そんなに嫌われてないわよ!」
「その結果がその胸というわけね」
「納得するな! 違うわよ! お母さんも大きかったから遺伝よ!」
凛子は隠すようにして大きな胸を抱いた。
しかしそれは逆効果で、かえって寄せられて強調してしまう。
真衣の顔を青ざめた。
「親子代々呪われてるとは……。やっぱり前世で相当殺したんじゃないの? クリボーとかを」
「マリオ! なんで前世がゲームキャラなのよ! というかマリオはまだ生きてるから!」
「あれは五億人目のマリオだよ。りんちゃんは一人目の生まれ変わり」
「多分そいつはクリボーに殺された側よ」
食事を食べ終わると眠そうだった真衣の目がさらにとろんとしてきた。そのまま前に傾き、顔から凛子の胸に倒れ込む。
「……やわらかい。これが呪いか」
「ひっぱたくわよ」
真衣は凛子の胸に顔をうずめながら呟いた。
「就活か……。プロになれなかったらあたしもやらないとなぁ……」
「……そうね。でもギター弾けるんだから長所はあるじゃない」
「だといいけど……」
真衣はすっと目を閉じた。
凛子はやれやれと思いながら真衣の頭を撫でてやる。
すると真衣は心地よさそうにした。
「……あ。そうだ」
「なに?」
「あたしの場合、毎晩りんちゃんに打ち込んでましたって言えばいいや」
「よくない!」
顔を真っ赤にする凛子に頭を叩かれ、真衣は目を覚ました。
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