ナイトシフト 1
ただでさえ客の少ない田舎のコンビニだが、夜になるとさらに少なくなる。
そんな中、大学生の鈴沢凛子はピンクナンバーの原付に乗って前のシフトに入っていた女子高生と交代するためにやって来た。
切れ長の目に前髪をぱつんと切ったロングヘアの黒髪がよく似合っている。
すらりとしていてスポーツが得意そうに見えるが、実際は文学部に所属する文学少女だった。
明日の講義は昼からのため、夜のシフトに入っている。
早めに来た凛子は制服に着替えると従業員室で本を読んでいた。
するといつもは遅刻して来る同じシフトの相方である本田真衣やって来た。
金髪のショートヘアを揺らし、眠そうな目で凛子に手を上げ、抑揚のない声で挨拶した。
「おっすぅー。りんちゃん。相変わらず胸大きいねぇ」
「挨拶と同時にセクハラしないでよ」
凛子は口角をひくつかせた。
それも気にせず、真衣は背負っていたリュックとギターをロッカーに入れる。
「べつにいいじゃん。女同士だし。なにより事実なんだから。つーかいらないなら分けてよ。こっちは二十歳になってもぺったんこなんだからさ」
淡々と制服に着替える真衣の胸は男と見間違えるほどなかった。
「一説だと前世の行いで胸のサイズが変わるそうよ」
凛子はしれっと嘘をつき、反撃に出る。
すると真衣は茫然とした。
「マジ? りんちゃん前世で何人殺したの?」
「殺してないわよ! 多分だけど!」
「そうか……。その大きな胸は来世で容易に人を殺せないようにするため神様が与えた枷なんだね」
「人の胸を囚人が付ける鉄球みたいに言うな」
「足枷ならぬ乳枷か」
「聞け」
ひとしきり凛子をからかったあと、真衣は自分の胸に触れてため息をついた。
「あたし、前世でどれだけ善行を積んだんだ? 世界でも救ったのかな?」
「…………」
凛子はお前が積んだのは悪行だと言いたかったが、さすがにかわいそうなのでやめておいた。
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