デイシフト 5

 夜になり、シフトの時間が終わると二人はやって来た女子大学生と交代し、帰路についた。

 二人はコンビニで買ったものを食べながら自転車を押していた。近くの車道には車が散見している。

 サラダチキンを食べる聖を見て、シュークリームを食べるゆうなは口の周りをクリームで汚しながら尋ねた。

「ねえ。ダイエット中?」

「好きなんだ。いいだろ別に」

「相変わらず格好いいねえ。惚れるわ。キスしていい?」

「ダメだ」

「ええ~。なんでぇ~?」

「なんでもだ」

「シュークリーム一口あげるから」

「いらない」

「やっぱりダイエット中なんじゃん」

「…………」

 図星だったのか聖は無言のまま答えなかった。

 それからしばらく歩くと小さな住宅街に差し掛かった。

 聖の家はその中の一軒でゆうなの家はもっと先にある古くて大きな家に住んでいた。

 分かれ道を前にして二人は立ち止まった。

 聖が相変わらず落ち着いて言う。

「じゃあまた明日な」

「うん」

「それとさ。さっきからずっとクリーム付いてるぞ」

「え? うそ? 取って」

「自分で取れ」

「ええ~。それだと取れたか分からないじゃん。ほら。お願い」

 そう言うとゆうなは目を瞑った。

 聖はため息をつくと辺りを見渡した。

 どうやら誰もいないみたいだ。

 それを確認したあと、聖は無防備に目を瞑るゆうなを見つめた。

 聖は顔を近づけると静かに言った。

「目、瞑っとけよ」

「うん」

 返事をしたゆうなの口元になにか柔らかなものが触れた。

 なんだろうと思ってゆうなが目を開けると、聖はもう離れていた。

 聖は恥ずかしそうな顔で口には少しだけクリームを付けている。

「……え? もしかして今――」

「じゃあな。明日寝坊するなよ」

 聖はそう言うと逃げるように帰っていった。

 小さくなる聖の背中を見て、ゆうなは少し驚いて自分の唇を撫でた。

 それから嬉しそうな顔で歩き出し、体温を上げながら思った。

(……今夜は寝られそうにないな)

 案の定、次の日ゆうなは遅刻して聖に怒られた。

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